雪で家が埋まった日に、暖を取る道具を屋内で使わないでください|停電の夜の一酸化炭素と、燃やさずに温まる側の数字【東北・2026年版】

雪の日の停電は、たいてい夕方に始まります。
部屋の照明がすっと消えて、ファンヒーターの送風も止まる。窓の外はもう暗い。除雪車の音も来ない。外気は氷点下で、家のなかの温度は1時間ごとに下がっていきます。
こういう夜に、物置から発電機やカセットこんろを出してくる——これは、誰でもやることです。ただ、その道具を屋内に持ち込んだ瞬間に、寒さとは別の危険が始まります。
先に結論
燃やす道具を屋内で使うと、一酸化炭素は数分で危険な濃度に届きます。
携帯発電機は、公的機関が「屋内では絶対に使用しない」と明記しています。車内・テント内も同等以上に危険です。
石油ストーブのメーカー公式は「寝るときは必ず消火」「窓の凍結など換気が十分にできない場所では使用しない」と書いています。
東北の1月は5℃を大きく下回るので、カセットガスの暖房機はそもそも点かないことがあります。
一酸化炭素は、何分で危ない濃度になるのか
一酸化炭素(CO)は無色・無臭です。煙のように見えず、においもしません。気づいたときには動けない、という性質の事故です。
製品評価技術基盤機構(NITE)が公表している、空気中のCO濃度と吸引時間による中毒症状は次のとおりです。
| 空気中のCO濃度 | 中毒症状 |
|---|---|
| 400ppm(0.04%) | 1〜2時間で前頭痛・吐き気/2.5〜3.5時間で後頭痛 |
| 1,600ppm(0.16%) | 20分間で頭痛・めまい・吐き気/2時間で死亡 |
| 3,200ppm(0.32%) | 5〜10分間で頭痛・めまい/30分間で死亡 |
| 12,800ppm(1.28%) | 1〜3分間で死亡 |
同じ資料には、携帯発電機を屋内で使用した場合のCO濃度の変化の実験例が載っています。運転を始めてから10分足らずで、濃度が急激に立ち上がる形のグラフです。
数字を並べると身構えてしまいますが、覚えていただきたいのは1点だけです。「換気しながら使えば大丈夫」が成り立つ濃度の上がり方ではない、ということです。
携帯発電機は、屋外であっても置く場所を選ぶ
NITEは2023年8月29日に、停電時の発電機によるCO中毒について注意喚起を出しています。そこに書かれている注意点は2つです。
○屋内では絶対に使用しないでください。発電機運転中の排ガスには一酸化炭素が含まれており、屋内で使用すると一酸化炭素中毒になるおそれがあります。
○屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等以上の危険性があります。排ガスが逆流しないように出入口、窓など開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用してください。
1つ目は、聞いたことがある方も多いと思います。問題は2つ目です。「屋外で使っているつもり」の場所が、実は屋内と同じになっていることがあります。
東北の冬で起きやすいのは、こういう形です。
- 玄関の風除室に置く(雪がかからないので、つい置きたくなる)
- 車庫のシャッターを少し開けて、その中で回す
- 掃き出し窓のすぐ外に置いて、コードだけ室内に引き込む
雪から守ろうとするほど、囲われた場所に近づいていきます。発電機を持っている方は、雪の日に置ける場所を、停電していない今のうちに決めておいてください。
車で暖を取るなら、先にマフラーの周りを掘る
寒い夜に車のエンジンをかけて暖を取る——これも実際によくある判断です。ここには、JAFが実測した数字があります。
2015年2月に北海道旭川市で行われたテストでは、同じ車を2台用意し、マフラーの高さまで雪で覆った状態でエンジンをかけ、車内のCO濃度を測っています。
| 条件 | 車内のCO濃度 |
|---|---|
| 対策なし | 16分後に400ppm、その6分後に測定上限の1,000ppm |
| マフラー周辺を除雪 | 終始ほとんど検知されず |
| 窓を5cmほど開ける | 5分で100ppm台、約40分後に400ppm、その後すぐ800ppm台 |
読みどころは2つあります。ひとつは、窓を5cm開けても、40分で400ppmに届いていること。「少し換気すれば平気」が成り立っていません。
もうひとつは、マフラーの周りを除雪した車では、ほとんどCOが検知されなかったことです。やることは「掘る」だけで、結果がここまで変わります。
同じテストでは、マフラーの近くで発煙筒を焚いて排ガスの流れも見ています。車の床下に溜まった排ガスが車内に吸い込まれていく様子が確認され、エアコンを内気循環にしていても車体のすき間から入る危険があるとされています。車を暖房として使う日は、まずスコップで排気口の周りを開けてからエンジンをかけてください。

▲ 当社施工事例:室内に設置した蓄電池
石油ストーブは「つけたまま寝られない」道具です
停電しても使える暖房として、東北の家には反射式の石油ストーブが1台残っていることがよくあります。実際、電気を使わずに部屋を暖められる数少ない道具です。
ただし、メーカーの公式な使い方には、停電の夜と相性の悪い条件が並んでいます。株式会社コロナの公式ページには、こう書かれています。
換気せずに使用しつづけないでください。酸素が不足すると、不完全燃焼し、一酸化炭素中毒になるおそれがあります。使用中は必ず1時間に1~2回(1~2分)換気をして、新鮮な空気を補給してください。
窓の凍結、地下室など換気が十分におこなえない場所では、使用しないでください。
寝るときや外出するときは必ず消火してください。
3つとも、冬の東北に直接刺さる文です。
「1時間に1〜2回、1〜2分の換気」は、氷点下の夜には相当こたえます。それでも、せっかく暖めた空気を捨てる作業が要る、というのがメーカーの指定です。
「窓の凍結」は、寒冷地でなければ出てこない言葉です。窓が凍って開かない家では使わないでください、とはっきり書かれています。
そして「寝るときは必ず消火」。停電の夜にいちばんつらいのはここです。石油ストーブは、朝まで部屋を守ってくれる道具ではありません。
消防庁 消防大学校 消防研究センターも、火気器具の注意点として「ガスや石油などの燃料を使用する時は、必ず換気をしましょう」としたうえで、煙突式のガス機器を使用中に隣の部屋で換気扇を回すと危険であることを添えています。同じページでは、CO警報器が寝具などのくん焼(無炎燃焼)火災をより早く感知できる場合があることにも触れられています。
カセットガスの暖房機は、寒い家では点かないことがあります
「カセットボンベ式なら電気もいらないし、備えておけば安心」——ここにも、東北ならではの落とし穴があります。
岩谷産業の公式FAQには、こう書かれています。
燃料となるカセットボンベ(ブタンガス)の特性により、10℃を下回ると気化しにくくなり、5℃以下になりますと、ほとんど気化しなくなるため、お使いいただくことはできません。
気象庁の平年値で、1月の平均気温は仙台2.0℃・山形−0.1℃・盛岡−1.6℃、日最低気温の平均は仙台−1.3℃・山形−3.1℃・盛岡−5.2℃です。暖房の止まった家のなかが何度まで下がるかは住宅の断熱性能によるので一概には言えません。ただ、外がこの水準の夜に暖房を失えば、室温の5℃という線は、そう遠くありません。
つまり、いちばん必要な場面で気化しない可能性があるのが、カセットガス式の弱点です。
持ち時間も確認しておきましょう。同じFAQに、ボンベ1本を強火で使い切るまでの実測値が載っています(気温20〜25℃のとき)。
| 機種 | 発熱量 | 連続燃焼時間 |
|---|---|---|
| カセットガスファンヒーター「風暖」 | 約2.0kW | 約1時間43分 |
| カセットガスストーブ「デカ暖」 | 約1.35kW | 約2時間30分 |
| カセットガスストーブ「マイ暖」 | 約1.0kW | 約3時間20分 |
一晩は持ちません。しかも上の数字は20〜25℃での実測ですから、寒い部屋ではこのとおりにはいきません。
安全装置についても補足しておきます。屋内用のカセットガス暖房機には、①転倒防止装置 ②立ち消え安全装置 ③不完全燃焼防止装置 の3つを付けるという法的な規制があります。屋外用にはこれらが一部ついていないため、屋内用としては使用できません。そして屋内用・屋外用を問わず、テントのような狭い密閉空間での使用は「酸欠や一酸化炭素中毒で死亡など重大事故となるおそれ」があるとして、公式に禁止されています。

▲ 当社施工事例:屋外に設置した蓄電池とパワーコンディショナ
燃やさずに温まる側の数字
ここまでが「使えない・気をつける」側です。では、燃やさずに何ができるのか。
暖房は、部屋の空気を温めるか、人を直接温めるかで消費電力がまったく違います。パナソニックの公式値では、電気しき毛布の定格消費電力は47〜54W、かけしき毛布で75Wです。一方、部屋を温めるセラミックファンヒーターは定格1,150〜1,250W。同じ「暖房」でも20倍以上の開きがあります。
この差が、蓄電池のある家では持ち時間の差になって出てきます。家電ごとの消費電力から持ち時間を逆算した表は停電のとき何を何時間動かせるかの記事に、暖房家電だけを取り出した比較は停電の夜の暖房家電の記事にまとめています。
停電の夜の組み立て方は、だいたいこの順番になります。
- 人を温める(電気しき毛布・湯たんぽ・重ね着)。ここに使う電力はごくわずか
- 1部屋に集まる。家じゅうを暖めようとしない
- 冷蔵庫と照明を落とさない。ここを維持できると生活が続く
- 燃やす道具は、屋外で・短時間で・起きているあいだだけ
蓄電池をお持ちなら、冬の設定そのものも見直しておく価値があります。充電時間帯・運転モード・放電下限の考え方は蓄電池の冬の設定の記事に、停電中に太陽光から充電を回すときの注意は停電中の残量の配分の記事に書いています。
当社が運営する「ソラカルテ」では、容量ごとの費用の目安をその場で試算できます。「何kWhあれば足りるのか」を考えるときの出発点にお使いください。
冬の停電は、東北では9日間続いたことがあります
「一晩しのげばいい」と考えてしまいがちですが、冬の停電は長引きます。
東北電力ネットワークの記録では、2022年12月の新潟県の大雪による停電は、延べ84,950戸・12月18日から12月27日までの9日間に及びました。倒木・倒竹が4,000か所を超え、「除雪が難航し設備被害箇所まで到着困難」だったと報告されています。
これが冬の停電の実像です。雪そのものより、除雪が終わらないと復旧に行けないことで時間が延びます。
だから、備えの考え方も「一晩」ではなく「何日か続いてもいいように」になります。燃やす道具を長く使い続けるほど危険が積み上がるのに対して、人を温める側の道具は電力がごく小さいので、日をまたいでも成り立ちます。
在宅で医療機器を使っているご家庭は、ここがさらに切実になります。蓄電池を医療機器に直接つながない理由と、外付けバッテリーを充電する電源としての使い方は在宅医療機器と停電の記事にまとめてありますので、あわせてご確認ください。
よくある質問
Q1. 換気扇を回しながらなら、屋内で発電機を使ってもいいですか。
A. いけません。NITEの注意喚起は「屋内では絶対に使用しないでください」と条件を付けずに書いています。さらに、屋外であっても自動車内やテント内は屋内と同等以上に危険とされ、出入口や窓などの開口部から離れた風通しのよい場所で使うよう求められています。換気の量で薄められる、という性質のものではないとお考えください。
Q2. 一酸化炭素は、においや煙で気づけますか。
A. 気づけません。NITEの資料でも一酸化炭素は「無色・無臭」と説明されています。頭痛やめまいが出たときにはすでに濃度が上がっているため、症状を目印にするのも危険です。燃焼器具を使う家では、CO警報器を用意しておくと早く気づけます。消防研究センターのページでも、CO警報器が寝具などのくん焼火災をより早く感知できる場合があることが紹介されています。
Q3. 蓄電池があれば、停電でも今までどおりエアコンで暖を取れますか。
A. 難しいと考えてください。部屋の空気を温める機器は消費電力が大きく、蓄電池の残量を短時間で使い切ります。加えて、停電時に使える回路や出力には機器ごとの上限があります。停電のときは「人を温める側」に切り替えて、照明と冷蔵庫を維持するほうが家に居続けられます。ご自宅の蓄電池でどの回路が生きるかは、取扱説明書と施工店にご確認ください。
まとめ
停電の夜に、暖を取る道具を選ぶときの線引きです。
- 一酸化炭素は無色・無臭。1,600ppmで20分後に頭痛・めまい、2時間で死亡(NITE)
- 携帯発電機は屋内で絶対に使わない。自動車内・テント内は屋内と同等以上に危険(NITE)
- 車で暖を取る日は、先にマフラー周りを除雪する。対策なしでは16分で400ppm、窓を5cm開けても約40分で400ppm(JAF実測)
- 石油ストーブは1時間に1〜2回の換気が前提で、寝るときは必ず消火。窓の凍結など換気が十分にできない場所では使わない(コロナ公式)
- カセットガスは5℃以下でほとんど気化しない。ボンベ1本の連続燃焼は約1時間43分〜3時間20分(岩谷産業公式)
- 人を温める道具は消費電力が小さい。電気しき毛布47〜54W、かけしき毛布75W(パナソニック公式)
寒い夜にいちばん危ないのは、「これくらいなら大丈夫だろう」と思える程度の工夫です。囲って、火を入れて、そのまま眠ってしまう。事故の形は、たいていこれです。
雪の季節に入る前に、発電機を置ける屋外の場所と、電気しき毛布のありかだけ決めておいてください。当社も点検や工事でお伺いした際に、停電のときどこで何を使うかという話はよくします。道具そのものより、置き場所と使う順番のほうが効きます。
※本記事は2026年9月26日時点で、製品評価技術基盤機構(NITE)・消防庁 消防大学校 消防研究センター・気象庁・JAF、および株式会社コロナ・岩谷産業株式会社・パナソニック株式会社が公開している情報にもとづいています。機器の仕様や注意事項は型式・改訂により変わります。ご自宅の機器については、必ずお手元の取扱説明書をご確認ください。
出典
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「携帯発電機による一酸化炭素中毒」(COは無色・無臭。400ppmで1〜2時間で前頭痛・吐き気、1,600ppmで20分間で頭痛・めまい・吐き気/2時間で死亡、3,200ppmで5〜10分間で頭痛・めまい/30分間で死亡、12,800ppmで1〜3分間で死亡。屋内で使用した場合のCO濃度の変化の実験例) https://www.nite.go.jp/data/000119246.pdf
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(令和5年8月29日。屋内では絶対に使用しない、屋外でも自動車内やテント内は屋内と同等以上の危険性) https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2023fy/prs230829.html
- JAFユーザーテスト「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意」(2015年2月16日・北海道旭川市。対策なしは16分後に400ppm・その6分後に1,000ppm、マフラー周辺を除雪した車は終始ほとんど検知されず、窓を5cm開けた場合は約40分後に400ppm・その後すぐ800ppm台。床下に溜まった排ガスが車内に吸い込まれる) https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/co-poisoning
- 株式会社コロナ「石油ファンヒーター・石油ストーブ 重要なお知らせ」(使用中は1時間に1〜2回・1〜2分の換気、窓の凍結や地下室など換気が十分におこなえない場所では使用しない、寝るときや外出するときは必ず消火) https://www.corona.co.jp/report/use/point01.html
- 岩谷産業株式会社「カセットガス暖房機シリーズ よくあるご質問」(屋内用の3つの安全装置と法的規制、屋外用は屋内用として使用できない、テントのような狭い密閉空間での使用は不可、ブタンガスは10℃を下回ると気化しにくく5℃以下でほとんど気化しない、機種ごとの発熱量と連続燃焼時間) http://www.i-cg.jp/support/faq/heater/
- 消防庁 消防大学校 消防研究センター「火気器具等の取扱いについて」(燃料を使用するときは必ず換気、煙突式のガス機器の使用中に隣で換気扇を回すと危険、CO警報器はくん焼火災をより早く感知できる場合がある) https://nrifd.fdma.go.jp/news/caution/heat_generator/index.html
- 気象庁「過去の気象データ検索 平年値(月ごとの値)」(統計期間1991〜2020年。1月の平均気温=仙台2.0℃・山形−0.1℃・盛岡−1.6℃、日最低気温の平均=仙台−1.3℃・山形−3.1℃・盛岡−5.2℃) https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php
- 東北電力ネットワーク「日本海側を中心とした大雪による停電について」(2022年12月27日。2022年12月18日〜27日・新潟県内で延べ84,950戸、倒木倒竹4,000か所超) https://nw.tohoku-epco.co.jp/information/1230943_2390.html
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監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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