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カタログの6.5kWhは、実際には5.5kWhです|蓄電池が停電のとき何を何時間動かせるか、家電の消費電力から逆算する【東北・2026年版】

先に結論 蓄電池の「持ち時間」は、実効容量 ÷ 動かす家電の消費電力で決まります。 カタログに6.5kWhと書かれた機種の初期実効容量は5.5kWh。冷蔵庫だけなら約166時間もちますが、エアコン暖房を入れた瞬間に約9時間になります。 仙台のエアコン暖房の消費電力量は、同じ機種でも東京の2.1倍(省エネ性能カタログの地域補正係数)。東北では「何kWhか」より「暖房をどうするか」で決まります。

カタログに「蓄電容量6.5kWh」と書かれた蓄電池で、実際に取り出せるのは5.5kWhです。

数字を落としているわけではありません。電池を長持ちさせるために、はじめから使わない領域を残してあるためで、メーカーの公式カタログにも「初期実効容量5.5kWh」と併記されています。

停電のときに何がどれだけ動くかは、この5.5kWhを、動かしたい家電の消費電力で割れば出ます。割り算ひとつです。

ところがこの割り算、東北の冬にやると答えが一気に短くなります。 その理由まで含めて、順番に見ていきます。

屋外の基礎ブロックの上に設置された家庭用蓄電池1台。砂利敷きの地面

▲ 当社施工事例:屋外に据えた家庭用蓄電池

カタログの「蓄電容量」と、停電で使える量は違う

まず、蓄電池のカタログに出てくる容量には2種類あります。

  • 蓄電容量:電池が持っている量。商品名にも使われる、いちばん大きく書かれている数字
  • 初期実効容量:そのうち、実際に取り出せる量。JIS C 4413にもとづいて表示されます

当社が取り扱う長州産業の公式カタログでは、次のように併記されています。

蓄電容量 初期実効容量
6.5kWhタイプ 5.5kWh
9.7kWhタイプ 8.3kWh
13.0kWhタイプ 11.1kWh

出典:長州産業「スマートPVマルチ」公式カタログ(JIS C 4413による)

3機種とも、おおむね85%前後です。カタログの数字をそのまま停電の計算に使うと、1割から2割ぶん、多く見積もることになります。

さらに、蓄電池にはJIS C 4414にもとづく性能表示ラベルがあり、そこには「システム容量利用率」「システム充放電効率」「システム生涯蓄電容量」という項目が並びます。充放電のたびに変換ロスが出るため、5.5kWhをためて5.5kWhをそのまま使えるわけではない、ということです。

この記事の計算では、初期実効容量5.5kWhをそのまま割り算に使います。変換ロスを入れると実際の持ち時間はもう少し短くなります。多めではなく、少なめに見ておいてください。

容量そのものの決め方は蓄電池は何kWhが正解?東北の冬から逆算する容量の選び方にまとめています。この記事は、その先の「停電のとき、実際に何が動くか」の話です。


家電の消費電力(W)は、どこを見れば書いてあるか

割り算のもう一方、消費電力は推測しないでください。ほぼすべての家電に、実物として書いてあります。

探す場所は3つです。

  1. 本体の銘板(裏面や側面の銀色のシール)。「消費電力 ○○W」と必ず書かれています
  2. 取扱説明書の仕様ページ。メーカーの公式サイトからPDFで落とせます
  3. メーカー公式の製品ページの仕様表

ここで大事なのは、「定格消費電力」と「最大消費電力」は別物だということです。エアコンや電子レンジのように動作中に大きく変わる家電は、両方が併記されています。

  • 持ち時間(何時間もつか)を計算するときは、実際の運転に近い値を使う
  • 同時に使えるか(ブレーカーが落ちないか)を判断するときは、最大消費電力を見る

この2つを混ぜると、計算は合っているのに停電中に蓄電池が止まる、ということが起こります。

公式に確認できる、代表的な数値

資源エネルギー庁の「省エネ性能カタログ2025年版」には、機器ごとの年間消費電力量が載っています。そこから割り戻した平均値が次のとおりです。

機器 公式の数値 平均消費電力(当社が割り戻した値)
電気冷蔵庫(401〜450L) 年間約290kWh(2024年の平均値) 約33W
電気冷蔵庫(501L以上) 年間約279kWh(2024年の平均値) 約32W
温水洗浄便座(貯湯式) 年間約238kWh 約27W
電子レンジ 年間約70.5kWh(2024年の平均値)
ジャー炊飯器(IH・5.5合以上8合未満) 年間約84kWh。炊飯1回158Wh、7時間保温165Wh

出典:資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2025年版」

冷蔵庫が意外に小さいことに驚かれるかもしれません。24時間つけっぱなしでも、1日で約0.8kWhです。しかも、大型のほうが年間消費電力量は小さい傾向にあります。

つまり、停電で冷蔵庫の中身を守るだけなら、蓄電池はかなり長くもちます。 問題はここから先です。

屋内の壁に取り付けられたパワーコンディショナ3台と、床置きの蓄電池1台

▲ 当社施工事例:屋内に設置したパワコンと蓄電池


東北の冬は、暖房が全部を持っていく

同じエアコンでも、東北で使うと消費電力量は東京の2倍以上になります。これは体感の話ではなく、公式カタログに係数として書かれています。

省エネ性能カタログの「地域補正係数(暖房)」は次のとおりです。東京を1.0としたときの倍率です。

地域 暖房の地域補正係数 通年の地域補正係数
東京 1.0 1.0
仙台 2.1 1.6
秋田 2.7 2.0
盛岡 3.3 2.4
新潟 1.9 1.5
札幌 4.4 3.1

出典:資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2025年版」

冷房能力2.8kWの代表機種で、暖房期間の消費電力量は607kWh(2024年・東京モデル)。これに仙台の2.1を掛けると、約1,275kWhになります。

カタログの試験条件は「暖房期間は11月8日から4月16日まで、6時から24時までの18時間運転」です。日数にして160日、時間にして2,880時間。1,275kWhをこれで割ると、平均で約440Wという数字が出ます。

仙台でエアコン暖房を1台つけると、平均で約440W。冷蔵庫13台ぶんです。

暖房が停電対策の主役になるのは、こういう理由です。詳しい備え方は冬の停電にどう備える?東北・寒冷地の停電対策もあわせてご覧ください。


石油ファンヒーターも「電気を使う暖房」です

灯油のストーブなら電気は要らない、と思われがちですが、石油ファンヒーターは電気がないと動きません。 点火のための予熱と、送風のファンに電気を使います。

そして、この消費電力が機種によって大きく違うのです。メーカー公式の仕様から拾うと、次のようになります。

点火時 燃焼時
ダイニチ工業 2025年モデル(Lタイプ) 370〜420W 大火力128〜214W/小火力62〜92W
コロナ 従来機種 約650W 予熱のため平均約80W
コロナ FH-CP25Y(G)(ポータブル電源対応) 166W 8.5〜14W(50Hz)

出典:ダイニチ工業「家庭用石油ファンヒーター L TYPE【2025年モデル】」、株式会社コロナ ニュースリリース

どちらが優れているという話ではありません。方式が違えば、必要な電気の量も違うというだけです。ただ、停電を前提に考えるなら、この数字は買う前に必ず見てください。燃焼時で8.5Wと214Wでは、25倍の差があります。

コロナのポータブル電源対応機は、電源側の条件も公表しています。

純正弦波または正弦波の100V・50Hzまたは60Hz、定格出力200W以上。修正正弦波・擬似正弦波・矩形波・110V以上には対応しない。

家庭用蓄電池の自立運転は正弦波の100Vを出しますので、ここは問題になりません。気をつけるべきはポータブル電源のほうです。安価な製品には修正正弦波のものがあり、暖房器具が動かない、あるいは故障の原因になります。


5.5kWhで、冬の停電を何時間しのげるか

ここまでの数字を、実際に割り算にしてみます。初期実効容量5.5kWh、変換ロスは含みません。照明・スマートフォン・情報機器の合計は、ここでは仮に100Wとして置きます(ご自宅で計算するときは、器具の銘板の値を足してください)。

初期実効容量5.5kWhの蓄電池が、動かす家電の組み合わせによって約166時間から約9時間まで変わることを示す横棒グラフ

動かすもの 合計消費電力 持ち時間
冷蔵庫だけ 約33W 約166時間(約7日)
冷蔵庫+照明ほか 約133W 約41時間
冷蔵庫+照明ほか+石油ファンヒーター(燃焼時100Wの機種) 約233W 約23時間
冷蔵庫+照明ほか+エアコン暖房(仙台の平均440W) 約573W 約9時間

同じ蓄電池、同じ容量です。動かすものを変えただけで、7日が9時間になります。

この表から読み取っていただきたいのは、次の3つです。

  1. 冷蔵庫と情報機器だけなら、蓄電池は数日もつ。冷蔵庫の中身と、スマートフォンでの情報収集は、まず守れます
  2. 暖房を電気でまかなうと、一気に1日を切る。東北の冬に「3日間の停電に備える」なら、電気の暖房だけでは足りません
  3. 石油ファンヒーターは、電気の暖房よりはるかに軽い。灯油があるなら、蓄電池は暖房そのものではなく「ファンヒーターの電源」として使うほうが、はるかに長くもちます

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容量より先に詰まるのが「同時に使えるか」

持ち時間の計算が合っていても、そもそも同時に動かせないことがあります。蓄電池が停電時に取り出せる電気の大きさには自立出力という上限があるためです。

一般的な機種で、特定負荷型が2kVA前後、全負荷型で4kVA前後。詳しくは蓄電池の全負荷型と特定負荷型はどう違うのかに整理しています。

停電中に上限を超えると、蓄電池は保護のために出力を止めます。容量が残っていても、電気が止まるということです。

とくに注意がいるのは、立ち上がりに大きな電流が流れる家電です。

  • 石油ファンヒーターの点火:166Wから650Wまで機種差があり、燃焼時の10倍以上になることがある
  • 冷蔵庫のコンプレッサーの起動:平均33Wでも、動き出す瞬間はそれより大きい
  • 井戸ポンプ・給水ポンプ:モーターの起動電流が大きい

ですから、判断に使うのは平均値ではなく、仕様表の「最大消費電力」です。ここを見落とすと、「計算では余裕があるのにブレーカーが落ちる」という状態になります。

地震のあとの手順や、復旧時の注意は地震で停電したとき、太陽光と蓄電池は使えるのかに詳しく書いています。


お湯は、電気を使わなくても出ることがある

停電時に見落とされがちなのが給湯です。

エコキュートは貯湯タンクにお湯をためているため、停電してもタンクに残っているお湯は取り出せる機種があります(非常用取水栓)。沸き上げはできませんが、断水時の生活用水としても使えます。

これは蓄電池の容量をまったく使いません。手順と注意点はエコキュートのお湯は断水・停電のとき使えるのかにまとめています。

停電対策を「全部を蓄電池でまかなう」と考えると、必要な容量はどこまでも大きくなります。電気を使わずに済むものを先に外していくほうが、現実的で、費用も抑えられます。


我が家の数字を出す、4ステップ

最後に、ご自宅で計算する手順をまとめます。紙とスマートフォンの電卓で15分ほどです。

  1. 停電中に動かしたいものを、紙に書き出す。「あったらいい」ではなく「無いと困る」だけに絞ります
  2. それぞれの銘板か取扱説明書から、消費電力(W)を写す。定格と最大が両方あれば、両方書きます
  3. 合計する。定格の合計 ÷ 1000 で kW になります。これで持ち時間 = 実効容量 ÷ 合計kW
  4. 最大消費電力の合計が、自立出力(kVA)を超えていないか確かめる。超えていたら、同時には使えません

そのうえで、見積書や仕様書で確認していただきたい数字が4つあります。

  • 初期実効容量(kWh):蓄電容量ではなくこちら
  • 自立出力(kVA):同時に使える大きさの上限
  • 全負荷か特定負荷か:特定負荷なら、どの回路が生きるかの一覧
  • 200V回路が出るか:エアコン・IH・エコキュートは200Vのことがあります

見積書を受け取ったら、当社が運営するソラカルテのAI診断にかけてみてください。上の4つが書面に記載されているかどうかも、あわせて確かめられます。契約前の段階で、口約束ではなく書面に残っているかを確認しておいてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 蓄電池が満充電なら、カタログの容量ぶんは必ず使えるのですか。

A. いいえ。カタログの「蓄電容量」ではなく「初期実効容量」が、実際に取り出せる量です。長州産業の公式カタログでは6.5kWhタイプで5.5kWh、13.0kWhタイプで11.1kWhと表示されています。さらに充放電のたびに変換ロスがありますので、計算は少なめに見ておくのが安全です。

Q2. 停電中に太陽光が発電していれば、蓄電池は減らないのではないですか。

A. 昼のあいだで、なおかつ晴れていればそのとおりです。ただし東北の冬は日照が短く、雪がパネルに載れば発電しません。夜間と雪の日は蓄電池だけが頼りになりますので、発電を当てにせずに持ち時間を計算しておくことをおすすめします。

Q3. 冬の停電に3日備えるには、何kWhの蓄電池が必要ですか。

A. 電気の暖房を含めるなら、現実的な容量では足りません。この記事の計算では、エアコン暖房を入れると5.5kWhで約9時間です。3日間となると、暖房を灯油の機器でまかない、蓄電池はその電源と冷蔵庫・照明・通信にあてるという組み立てのほうが確実です。容量を大きくするより、動かすものを減らすほうが効きます。


まとめ:容量ではなく、動かすものが持ち時間を決める

  • カタログの蓄電容量と初期実効容量は違う。6.5kWhタイプで5.5kWh、13.0kWhタイプで11.1kWh(長州産業 公式カタログ・JIS C 4413による)
  • 家電の消費電力は銘板と取扱説明書に必ず書いてある。推測しない。定格と最大を区別する
  • 冷蔵庫(401〜450L)は年間約290kWh=平均約33W。24時間で約0.8kWhしか使わない
  • 仙台のエアコン暖房の消費電力量は東京の2.1倍(地域補正係数)。2.8kW代表機種で暖房期間約1,275kWh=平均約440W
  • 石油ファンヒーターの消費電力は機種で25倍の差(燃焼時8.5W〜214W)。点火時は166W〜650W
  • 5.5kWhの持ち時間は、冷蔵庫だけなら約166時間、エアコン暖房を足すと約9時間
  • 見積書で確認するのは初期実効容量・自立出力・全負荷か特定負荷か・200V回路の4つ

停電の備えは、大きな蓄電池を買うことではありません。動かすものを決めて、割り算をすることです。その割り算の答えが足りなければ、そこではじめて容量の話になります。

出典・確認先(2026年8月20日確認)

※本記事は2026年8月20日時点の情報です。消費電力・実効容量・自立出力は機種により異なりますので、必ずお使いの機器およびご検討中の機種の仕様をご確認ください。平均消費電力の数値は、公式カタログに記載された年間・期間消費電力量を試験条件で割り戻した当社の計算値であり、実際の運転条件によって変わります。持ち時間の計算に変換ロスは含んでいません。

その見積書、本当に妥当ですか?(ソラカルテ)

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監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら

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