地震で停電したとき、太陽光と蓄電池は使えるのか|揺れた直後の手順と復旧までの注意点【東北・2026年版】

2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生し、気象庁は最大震度7を観測したと発表しています(マグニチュード7.1、気象庁「令和8年熊本地震」)。被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
こうした報道に触れると、東北にお住まいの方からも「うちも太陽光と蓄電池を載せているけれど、地震で停電したら本当に使えるのか」というご相談が増えます。
結論から申し上げると、使える場合と、使ってはいけない場合があります。そして、その見極めを間違えると、停電をしのぐどころか感電や火災につながりかねません。
この記事では、地震による停電を、台風・大雪の停電と分けて考えるという視点で整理します。揺れた直後にやること、太陽光と蓄電池がどこまで頼れるのか、そして復旧の瞬間にいちばん危険が高まる「通電火災」まで、公的機関が公表している情報を根拠に、施工店の実務目線で順を追って解説します。
なお、冬の寒波・大雪による停電への備えは冬の停電にどう備える?東北・寒冷地の停電対策で解説しています。本記事は「地震」に絞った内容です。
地震の停電は、台風・大雪の停電と何が違うのか
同じ「停電」でも、原因が地震のときは性質がまったく異なります。違いは大きく3つあります。
1. 予告がない
台風や大雪は、数日前から進路や降雪量の予報が出ます。「明日の夜が山場だから、今日のうちに蓄電池を満充電にしておく」「風呂に水を張っておく」といった準備ができます。地震にはこの猶予がありません。備えは「揺れる前にすべて終わっている」必要があるという点が、根本的に違います。
2. 復旧に「入れない」ことがある
これが地震特有の、いちばん見落とされやすい点です。
東北電力ネットワークが公表した資料に、その実例があります。2025年12月8日23時15分に発生した青森県東方沖を震源とする地震では、青森県および岩手県で延べ10,886軒が停電しました。停電の主な原因は「地震の揺れによる電線の断線や混線など」とされています。
翌9日の1時05分には岩手県盛岡市の316軒が復旧しましたが、青森県むつ市の8軒については、同日8時00分の時点でまだ停電が続いていました。その理由として資料には、家屋損壊等により立ち入りが制限されており、現時点で復旧作業に着手することが困難な状況と記されています。
つまり地震の停電は、電力会社が動けば必ず直る、というものではありません。現場に人が入れなければ、電気は戻らないのです。台風による停電が「風がやめば復旧作業が始まる」のに対し、地震では建物や道路の被害が復旧そのものを止めてしまいます。
3. 発電・蓄電設備そのものが被災している可能性がある
台風・大雪でも設備は傷みますが、地震では屋根・架台・基礎・配線がまとめて揺さぶられます。「停電したから自立運転に切り替えよう」と操作する前に、設備が無事かどうかを確かめる工程が挟まる——これが地震ならではの手順です。

▲ 当社施工事例:屋外設置の蓄電池とパワコン
揺れた直後、太陽光・蓄電池のある家がやること
まず大前提として、人命が最優先です。身の安全の確保、火の元の確認、避難の判断が先で、設備の話はその後です。そのうえで、電気設備について押さえておきたい順番を整理します。
① 屋根に登らない・パネルに近づかない
地震のあと、屋根の太陽光パネルがずれていないか気になるものですが、ご自身で屋根に登るのは絶対に避けてください。余震の可能性がある状態で、傾いた屋根に登る危険は言うまでもありません。
そしてもう一つ、太陽光特有の理由があります。経済産業省は、被災した太陽電池発電設備について、破損・浸水した場合であっても光が当たれば発電し、接近または接触すると感電するおそれがあると注意喚起しています。太陽光発電協会(JPEA)も同様の手順・留意点を公表しています。
ここが誤解されやすいところです。パワーコンディショナを止めても、ブレーカーを落としても、太陽電池パネル自体は光が当たっている限り発電を続けます。壊れたパネルや、外れて落ちたケーブルは、見た目が壊れていても電気的には「生きている」状態です。
破損したパネルがやむを得ず手の届く場所にある場合、経済産業省・JPEAが示している考え方は、ブルーシート等で覆って光を遮る、またはパネル面を地面に向けるというものです。そのうえで、速やかに販売施工店など専門業者へ連絡してください。
② 建物の外から、機器の外観だけを確認する
屋外に置いた蓄電池やパワーコンディショナは、離れた位置から目視できる範囲で次を確認します。
- 本体が傾いていないか、基礎からずれていないか
- 配管・配線が引っ張られたり、外れたりしていないか
- 焦げた臭い、異音、発煙がないか
- 水がかぶった形跡がないか
一つでも当てはまれば、操作せずに施工店へ連絡してください。集電箱やパワーコンディショナの内部に水分が残っている場合、触ると感電するおそれがあることも経済産業省が指摘しています。
③ 異常がなさそうなら、初めて電源の話に進む
外観に異常がなく、建物にも大きな損傷がなさそうであれば、その時点で初めて「停電中に電気をどう使うか」の話に進みます。順番を逆にしないことが大切です。
停電中、太陽光と蓄電池は「そのまま使える」とは限らない
無事だった場合でも、機器の構成によって使い方が変わります。
太陽光だけの場合——自立運転コンセントは手動切替
太陽光発電システムは、停電すると系統への逆流を防ぐために自動的に停止します。復旧を待つだけでは電気は使えません。パワーコンディショナを自立運転モードに切り替え、専用の自立運転コンセントから電気を取り出す操作が必要です。
自立運転で使える電力には上限があり、機種によりますが多くは100V・1,500W程度が目安です。エアコンやIHのような200V機器、消費電力の大きい家電は動きません。また、日射がなければ出力は出ません。夜間や、雪がパネルに積もっている状態では発電しません。
そして、地震の直後にはこの操作の前に外観点検が必要という点が、通常の停電と違います。
蓄電池がある場合——「全負荷か特定負荷か」で世界が変わる
蓄電池は停電を検知すると自動で放電に切り替わる機種が主流ですが、家中のどこまで電気が来るかは設計時に決まっています。
特定負荷型は、あらかじめ決めた回路(冷蔵庫・照明・一部コンセントなど)だけが生きます。全負荷型は分電盤全体が対象になり、200V機器も条件を満たせば使えます。この違いは停電時の生活の質に直結しますので、蓄電池の「全負荷」と「特定負荷」の違いで詳しく解説しています。何日しのげるかという容量の考え方は蓄電池の容量の選び方をご覧ください。
感震ブレーカーが作動していると、蓄電池からも電気が来ない
意外に知られていないのが、この組み合わせです。
感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知して自動的に電気を遮断する装置です。地震火災を防ぐうえで有効な設備なのですが、作動して主幹ブレーカーが落ちた状態では、蓄電池が正常でも家の中のコンセントに電気は届きません。「蓄電池が壊れた」と思われたケースで、実際にはブレーカーが落ちていただけ、ということが起こり得ます。
ただし、落ちたブレーカーをすぐ上げてよいわけではありません。次の章で説明する通電火災の話に直結します。感震ブレーカーを設置する場合は、蓄電池の自立運転回路との関係をどう設計するかを、施工時に必ず確認しておいてください。
復旧の瞬間がいちばん危ない——通電火災
地震による停電で、最も注意すべきタイミングは「停電した瞬間」ではなく「電気が戻った瞬間」です。
内閣府は、大規模地震時の電気火災について、地震による火災の過半数は電気が原因であり、東日本大震災における本震による火災のうち、原因が特定されたものの過半数が電気関係の出火だったと公表しています。
仕組みはこうです。揺れで倒れた電気ストーブ、傷ついた配線、水に濡れた家電などが、停電中は「無害」に見えています。そこに電気が復旧すると、誰もいない部屋で通電が始まり、出火に至る——これが通電火災です。避難して家に誰もいない状態では、発見も初期消火も遅れます。
避難するとき、ブレーカーを落とす
対策の基本は単純で、避難する前に分電盤の主幹ブレーカーを落とすことです。停電していても、復旧に備えて必ず切ってから家を出ます。
感震ブレーカーという選択肢
とはいえ、揺れの最中や避難の慌ただしさの中で、分電盤まで行く余裕があるとは限りません。不在時に地震が起きることもあります。そのために有効なのが感震ブレーカーです。内閣府は、不在時やブレーカーを落として避難する余裕がない場合に電気火災を防止する有効な手段と位置づけています。
消防庁は感震ブレーカーを次の4タイプに整理しています。
- 分電盤タイプ(内蔵型):分電盤に内蔵されたセンサーが揺れを感知して電力を遮断する(電気工事が必要)
- 分電盤タイプ(後付け型):既設の分電盤に後付けする。漏電ブレーカーが設置されている場合に設置可能(電気工事が必要)
- コンセントタイプ:センサーが揺れを感知し、そのコンセントからの電力供給のみを遮断する
- 簡易タイプ:おもりの落下やバネの力で、物理的にブレーカーを落とす
経済産業省も関係省庁と連携して普及を進めており、民間規格である内線規程にも感震ブレーカーの設置が規定されています。
太陽光がある家は、もう一つ確認が要る
ここが本記事でいちばんお伝えしたい点です。
主幹ブレーカーを落としても、屋根のパネルは発電を続けています。 分電盤を切ることは、電力会社から来る電気を止める行為であって、太陽電池が電気を作ること自体は止められません。太陽光発電システムのある住宅では、避難時のブレーカー操作に加えて、
- 太陽光用のブレーカー・パワーコンディショナの運転スイッチの位置を家族が把握しているか
- 屋根やパネルに損傷が疑われる場合は、通電を再開する前に施工店の点検を受ける
という2点を押さえておいてください。地震で屋根材ごとずれた、ケーブルが引きちぎられた、といった状態のまま電気を戻すのは危険です。太陽光設備の火災リスクと点検の考え方は太陽光発電の火災リスクと点検で詳しく扱っています。
なお、切れて垂れ下がった電線には絶対に触れないでください。東北電力ネットワークも停電時の注意として繰り返し呼びかけている事項です。

▲ 当社施工事例:屋根に太陽光を設置した住宅
東北・寒冷地で「地震+停電」が重なると何が起きるか
東北にお住まいの方に、特に考えておいていただきたい組み合わせがあります。冬の地震です。
前掲の青森県東方沖の地震は12月8日の夜でした。真冬の東北で、夜に、停電が起きたということです。ここに寒冷地固有の条件が重なります。
1. 雪が積もったパネルは発電しない
停電中の頼みの綱である太陽光発電は、パネルに雪が載っていれば出力が出ません。晴れていても、朝のうちは積雪で発電が始まらないこともあります。冬の停電では「太陽光があるから昼間は大丈夫」が成り立たない日があるという前提で、蓄電池の容量や運用を考える必要があります。
2. 暖房・給湯の停止が命に関わる
氷点下の夜に暖房が止まれば、健康被害のリスクが現実になります。加えて、室温低下による水道管・給湯設備の凍結という二次被害もあり得ます。この点は冬の停電対策の記事で詳しく扱っています。
3. 復旧に入れない条件がさらに増える
地震そのもので道路が損傷したうえに積雪があると、復旧車両の到達はいっそう難しくなります。先ほどの「家屋損壊で立ち入りが制限され復旧作業に着手できない」という状況に、雪という条件が上乗せされる形です。
4. 低温は蓄電池の性能にも影響する
リチウムイオン蓄電池には使用周囲温度の規定があり、低温下では充放電の性能に影響が出ます。詳しくは寒冷地の蓄電池選びにまとめています。
「地震はいつ起きるか分からない」ということは、東北では「冬に起きる可能性がある」ということです。設計の前提を、いちばん厳しい季節に合わせておく意味はここにあります。
地震に備えるために、設置の段階で決めておくこと
すでに設置済みの方も、これから検討される方も、次の項目は施工店と共有しておく価値があります。
① 屋外機器の固定方法
蓄電池やパワーコンディショナは重量物です。基礎の作り方、アンカーボルトによる固定、機器の設置高さ(積雪と浸水の両方を考えた高さ)が、地震時の安定性を左右します。当社では屋外設置の蓄電池を基礎ブロックで高さを確保して据え付けていますが、これは積雪対策であると同時に、確実に固定するための工程でもあります。
② 設置場所そのもの
避難経路をふさがない位置か、落下物の影響を受けにくい位置か。地震を想定すると、置き場所の判断基準が一つ増えます。
③ 停電時にどの回路を生かすか
特定負荷型を選ぶ場合、どの回路を残すかは設計時に決めます。冷蔵庫・照明・通信機器・(可能なら)暖房——ご家庭の優先順位を、契約前に言語化しておいてください。
④ 家族全員が操作を知っているか
自立運転への切替方法、ブレーカーの位置、施工店の連絡先。取扱説明書の場所を含めて、家族で共有しておきます。停電の当日に説明書を探すことになると、それだけで数十分が失われます。
⑤ 復旧後の点検を誰に頼むか
地震で揺れた設備は、外から見て異常がなくても点検を受けるのが安全です。施工した会社と連絡が取れる関係を保っておくことも、備えの一部です。
なお、蓄電池やV2Hの導入で使える補助金については2026年後半の補助金まとめで最新の状況を整理しています。制度は年度や予算の消化状況で変わりますので、検討時点の情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 地震で停電しました。蓄電池が動いていないようですが、故障でしょうか。
A. 故障と決めつける前に、まず分電盤を確認してください。感震ブレーカーや主幹ブレーカーが落ちていると、蓄電池が正常でも室内に電気は届きません。ただし、建物や設備に損傷が疑われる状況でブレーカーを戻すのは危険です(通電火災のおそれがあります)。焦げた臭い・異音・機器の傾き・浸水の形跡がある場合は、操作せずに施工店へご連絡ください。
Q2. 屋根のパネルが割れているように見えます。応急処置をしてもよいですか。
A. 屋根に登っての作業はお避けください。経済産業省・JPEAは、破損したパネルでも光が当たれば発電し、接近・接触で感電するおそれがあるとして注意を呼びかけています。地上で安全に手が届く範囲であれば、ブルーシート等で覆って光を遮る、パネル面を地面に向けるといった対応が示されていますが、いずれの場合も速やかに専門業者へ連絡することが前提です。
Q3. 停電が長引きそうです。蓄電池の電気をできるだけ持たせるコツはありますか。
A. 停電を検知した直後に、使う家電を絞ることです。冷蔵庫(開閉を最小限に)・照明・スマートフォンの充電・情報収集の手段を優先し、それ以外は落とします。晴れていて太陽光が発電できる状況なら、日中に消費し、蓄電池は夜間に回すという使い分けが基本です。冬の東北では、パネルの積雪で日中の発電が期待できない日がある点も見込んでおいてください。
まとめ:地震の停電は「順番」で守る
地震による停電への備えを、最後に整理します。
- 地震の停電は復旧が読めない。 家屋損壊で立ち入りが制限され、復旧作業に着手できないことが実際に起きています(東北電力ネットワーク公表資料)
- 揺れた直後は、点検が先、操作が後。 屋根に登らない、破損パネルに近づかない。光が当たれば発電し感電のおそれがあります(経済産業省・JPEA)
- いちばん危ないのは復旧の瞬間。 地震火災の過半数は電気が原因とされています(内閣府)。避難前に主幹ブレーカーを落とす、感震ブレーカーを検討する
- 太陽光がある家は、ブレーカーを落としてもパネルは発電している。 損傷が疑われるなら通電再開の前に点検を
- 東北では「冬に起きる地震」を前提に設計する。 積雪でパネルが発電しない日、暖房が止まるリスク、復旧の遅れが重なります
太陽光や蓄電池は、正しく設計され、正しく扱われて初めて非常時の力になります。逆に、被災した設備を手順を飛ばして扱えば危険な存在にもなり得ます。「うちの場合、揺れたあと何をどの順番でやればいいのか」——この問いに家族全員が答えられる状態を作っておくことが、いちばん確実な備えです。
当社は宮城県を拠点に、東北各県で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートの設計施工を行っています。既設の設備の点検や、停電時の運用のご相談も承っております。
末筆ながら、今回の地震で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を願っております。
※本記事は2026年8月1日時点の情報です。制度・仕様・各社の対応は変更される場合がありますので、実際のご判断の際は各公式情報をご確認ください。
出典(公式)
- 気象庁「令和8年熊本地震 ポータルサイト」 https://www.jma.go.jp/jma/menu/20260728_kumamoto_jishin.html
- 経済産業省「浸水した太陽電池発電設備による感電事故防止について(注意喚起)」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2019/10/20191031.html
- 一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)「太陽光発電設備の水没による感電防止及び、被災設備の点検・撤去に関する手順・留意点について」 https://www.jpea.gr.jp/news/537/
- 内閣府 防災情報「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」 https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/
- 総務省消防庁「感震ブレーカー」 https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/earthquake-sensitive_breaker/
- 経済産業省「感震ブレーカーの普及啓発」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/270105-1.html
- 東北電力ネットワーク「地震発生の影響による停電の状況について(復旧報)」2025年12月9日 https://nw.tohoku-epco.co.jp/news/pdf/__icsFiles/afieldfile/2025/12/09/2512090003.pdf
- 東北電力ネットワーク「停電情報」 https://nw.tohoku-epco.co.jp/teideninfo/
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監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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