「太陽光が止まっている」と思ったら|パワコンの表示で切り分ける手順と、東北で多い「電圧上昇抑制」の正体【2026年版】

「モニターに見慣れない表示が出ていて、太陽光が止まっているみたいなんです。故障でしょうか」
こういうご相談をいただいたとき、私たちがまず確認するのは「本当に止まっているのか」です。
というのも、お客様が「止まった」とおっしゃる状態の多くは、実際には壊れておらず、パワーコンディショナ(パワコン)が設計どおりに動いているケースだからです。太陽光の設備には、法律や技術基準を守るためにわざと出力を絞る/わざと停止する仕組みがいくつも入っています。それを知らないまま業者を呼ぶと、「異常なし」で点検料だけかかった、ということになりかねません。
この記事では、①60秒でできる切り分けの手順、②東北でとくに多い「電圧上昇抑制」の正体、③意外と知られていない「力率95%」の話、④停電のときに必ず止まる理由、⑤では本当に異常なのはどんな状態か、を順に整理します。

▲ 当社施工事例:外壁のパワコンと切替盤
まず60秒:3つだけ確認します
慌てて業者に電話する前に、この3点をメモしてください。あとの判断がまるで変わります。
確認1|家全体が停電していないか
照明やコンセントが使えるか。使えないなら、太陽光の問題ではなく家の停電です。分電盤の主幹ブレーカー、ご近所の様子を見てください。
確認2|パワコンの表示は「消えている」のか「エラーが出ている」のか
これは決定的な違いです。
- 表示自体が消えている(真っ暗)→ パワコンに電気が来ていない可能性。ブレーカーか本体側
- 表示は生きていて、番号や記号が出ている→ パワコンは動いていて、自分の判断で止まっている/絞っている
後者なら、その表示を写真に撮るか書き写してください。復電や日射の回復で自動的に消えてしまい、あとから「何が出ていたか分からない」となるのがいちばん困ります。
確認3|発電量は「ゼロ」なのか「少ない」のか
ここも分かれ道です。
| 状態 | 疑う先 |
|---|---|
| 昼でも完全にゼロ | 停止している(保護動作・故障・ブレーカー) |
| 発電はしているが少ない | 出力を絞られている(電圧上昇抑制・温度・影・汚れ) |
| 一部の時間帯だけ頭打ち | ほぼ電圧上昇抑制 |
「少ない」だけなら、真夏なら屋根の温度が原因のことも多いです(夏に発電量が伸びない理由)。
東北で多い「電圧上昇抑制」——これは故障ではありません
住宅用の太陽光で、いちばん多い「止まっているように見えるけれど正常」がこれです。
なぜ出力を絞るのか
電気を送る側(一般送配電事業者)には、お客様の家に届く電圧を一定の範囲に保つ法律上の義務があります。電気事業法施行規則第38条は、維持すべき値をこう定めています。
| 標準電圧 | 維持すべき値 |
|---|---|
| 100ボルト | 101ボルトの上下6ボルトを超えない値(95〜107V) |
| 200ボルト | 202ボルトの上下20ボルトを超えない値(182〜222V) |
ところが太陽光で発電した電気を系統へ送り出す(逆潮流する)と、送り出す側の電圧は電線の抵抗のぶんだけ上がります。押し出すには、相手より少し高い圧力が要る、というイメージです。
そこでパワコンは、連系点の電圧が上限に近づくと自分の出力を絞り、それでも収まらなければ止まります。これが電圧上昇抑制です。法律で決まった電圧の枠を、あなたの家の設備が守っているという動作であって、壊れているわけではありません。
こういう出方をします
- 晴れた日の、昼のいちばん発電する時間帯だけ起きる
- 発電量のグラフが、山のてっぺんだけ水平に切り取られたような形になる
- あるいは、ギザギザに上下を繰り返す(絞る→電圧が下がる→戻す→また上がる)
- 曇りの日や朝夕には起きない
グラフの形で、かなりはっきり分かります。モニターやアプリで1日のグラフ(日報)を見てください。月報や年報では見えません。
東北で起きやすい条件
現場の実感としては、次の3つが重なると出やすくなります。
- 柱上トランス(変圧器)から家までの引込線が長い — 敷地が広く、隣家と離れている地域。東北の農村部・郊外に多い条件です
- 同じ配電線に太陽光の家が多い — 近所で同時に売電すると、その区間の電圧が全体的に押し上げられます
- 昼に家で電気を使っていない — 発電した分がまるごと系統へ向かうので、電圧が上がりやすくなります
つまり、「屋根が広くて、隣が遠くて、日中は留守」というお宅で起きやすいわけです。東北の戸建てには、まさに当てはまる家が少なくありません。
「出力制御」とは別物です
似た言葉に「出力制御」がありますが、まったく別の話です。出力制御は電力の需給バランスをとるために電力会社側の指令で行うもので、東北の住宅用(10kW未満)は当面その対象になっていません。詳しくは出力制御の記事に整理しました。
一方の電圧上昇抑制は、あなたの家のパワコンが自分で判断して行う動作です。混同すると原因の切り分けを間違えます。

▲ 当社施工事例:パワコン3台の設置例
意外と知られていない「力率95%」
もうひとつ、「思ったより売電量が少ない」の背景にある仕組みです。
東北電力ネットワークは、太陽光を低圧配電線に連系するお客様向けの資料で、次のように案内しています。
低圧配電線に逆潮流有りで連系する発電設備等の増加により、配電系統の電圧上昇が懸念されております。この対策として、低圧パワーコンディショナ(以下、低圧PCS)は、力率一定制御機能を具備し、その力率値を95%とすることが系統連系規程(JEAC9701-2016 2017年追補版その1)に規定されております。 (東北電力ネットワーク「低圧パワーコンディショナ(低圧PCS)の力率一定制御(力率値95%)の採用について」)
かみくだくと、住宅用のパワコンは、はじめから「電圧を上げにくいモード」で運転するよう決まっているということです。前の章で説明した電圧上昇を、そもそも起こりにくくするための業界共通のルールです。
実務上のポイントは2つです。
- これは設定ミスではありません。 「力率を100%にすれば売電が増えるのでは」と考えたくなりますが、系統連系規程に基づく設定であり、勝手に変えるものではありません
- 同じ皮相電力(kVA)でも、力率95%なら取り出せる有効電力(kW)はそのぶん小さくなります。 ただし定格の取り方は機種によって違うため、実際にどれだけ効くかは機種ごとの確認が必要です
見積りの発電量シミュレーションが、この分まで織り込まれているかどうか。気になる方は、「力率95%で計算していますか」と一言聞いてみてください。答えられる会社かどうかで、その後の付き合い方も見えてきます。
停電したら必ず止まります——単独運転検出
停電したときに太陽光が止まるのは、安全のための必須機能です。
系統が停電しているのに、太陽光だけが電気を送り続けたらどうなるか。復旧作業をしている作業員が、切ったはずの電線で感電します。これを防ぐため、パワコンには単独運転検出という機能が備わっており、系統の停電を検知すると自動で解列(切り離し)します。
ご家庭で使えるのは、その代わりに用意されている自立運転です。太陽光だけの家は手動で切り替える必要があり、蓄電池がある家は自動で切り替わる機種がほとんどです(全負荷型と特定負荷型、冬の停電対策)。
知っておくと落ち着けるのが、復電後の挙動です。 停電が直ってもパワコンはすぐには戻りません。系統が本当に安定したことを確認してから再び並列するため、数分の待ち時間がある機種が一般的です。「電気は戻ったのに太陽光だけ動かない」と焦って業者に電話する前に、まず5分ほど待ってみてください。
では、本当に異常なのはどんな状態か
ここまでは「正常な動作」でした。次のいずれかに当てはまるなら、点検が必要です。
1. 表示そのものが消えていて、日中もまったく発電しない
パワコンに電源が来ていない状態です。分電盤の太陽光用ブレーカーが落ちていないか確認し、入れ直しても変わらなければ本体側の可能性があります。入れ直しは1回まで。すぐまた落ちるなら、原因があるということなので、それ以上は繰り返さないでください。
2. 同じエラーが毎日決まって出る/再起動してもすぐ戻る
一過性の保護動作なら、翌日には出ません。毎日同じ時刻・同じ表示が続くなら、記録を持って施工店に相談する段階です。
3. 発電量が「一部だけ」落ちている
複数系統(ストリング)で組んでいる場合、片方だけゼロという出方をします。接続箱・ケーブル・特定のパネルまわりが疑わしく、目視では分かりません。
4. 異音・焦げた臭い・変色・発熱
これは即座に止める案件です。 ブレーカーを切って、施工店またはメーカーの窓口へ連絡してください。落雷のあとであれば雷サージの記事、火災の考え方は太陽光の火災リスクと点検商法にまとめています。
電圧上昇抑制が続くとき、できること
「正常な動作」だと分かっても、売電が減っているのは事実です。打てる手はあります。
順番1|まず記録を取る
1日のグラフを、晴れた日で3日ぶん。抑制の出る時間帯と、頭打ちになっている出力値。これがないと相談が進みません。
順番2|施工店に整定値と設置状況を確認してもらう
パワコン側の設定値(何ボルトで抑制を始めるか)は、技術基準の範囲内で調整の余地がある場合があります。また、パワコンから分電盤までの配線が細い・長いといった施工側の要因で電圧が上がっていることもあります。まずここを見ないまま電力会社の話に進んでも、答えが出ません。
順番3|配電線側の調査を依頼する
施工側で説明がつかない場合、一般送配電事業者(東北エリアは東北電力ネットワーク)に配電線側の状況を確認してもらう流れになります。個人で直接進めるより、施工店を通したほうが話が早いのが実情です。測定データを添えて依頼する必要があるためです。
順番4|「送らずに使う」に切り替える
現実的にいちばん効くのがこれです。発電した電気を系統に送らなければ、電圧上昇抑制は起きません。
- 蓄電池で昼の余りをためる
- エコキュートの昼沸きに回す(おひさまエコキュートと太陽光の連携)
- 洗濯・食洗機・EV充電を昼に寄せる
売電単価が下がっている今、自家消費に寄せることは抑制対策と経済性の両方で理にかなっています(自家消費の始め方)。
「無料点検」の電話には気をつけてください
発電量が落ちている、という悩みは、残念ながら訪問販売や電話勧誘の格好の入口になります。「近くで工事をしていて、お宅の発電量が落ちているのが見えた」という趣旨の声かけは、技術的にありえません。他人の家の発電量は外から分かりません。
まずは設置した施工店へ。連絡がつかない、廃業しているという場合でも、地元で施工している会社に見てもらえば済みます。点検商法の見分け方はこちらの記事に詳しく書きました。
パワコンの交換や修理の見積りを受け取ったものの、金額が妥当か分からない——という段階でしたら、当社が運営する「ソラカルテ」の見積書AI診断が使えます。手元の見積書をその場で確認でき、電話番号の登録も不要です。パワコン交換の考え方そのものは卒FITとパワコン交換の記事にまとめています。
よくあるご質問
Q1. 電圧上昇抑制で減った売電は、電力会社が補償してくれますか?
A. 補償の対象にはなりません。電圧を法定の範囲に保つことは一般送配電事業者の義務であり、その枠内に収めるためにパワコンが出力を絞るのは、設備として正しい動作だからです。ただし、配電線側に是正できる余地があるかどうかを調べてもらうこと自体は可能です。感情的に交渉するより、測定データを添えて事実ベースで相談するほうが前に進みます。
Q2. エラーコードの意味を、ネットで調べて自分で対処してもいいですか?
A. 調べること自体は問題ありませんが、同じ番号でもメーカーによって意味がまったく違います。他社の表を見て自己判断すると、逆に危険な操作をしてしまうことがあります。番号は「記録して伝えるためのもの」と考えて、判断はご自宅の機種の説明書か施工店に委ねてください。
Q3. 蓄電池を付ければ、電圧上昇抑制はなくなりますか?
A. 「減らせる」が正確な答えです。昼の余剰を蓄電池が吸収すれば、系統へ送り出す量が減り、抑制のかかる時間は短くなります。ただし蓄電池が満充電になったあとは、また余った分が系統に向かいます。晴天の週末に一日中家を空けるような使い方だと、午後には抑制が戻ってくることもあります。「ゼロになる」と説明されたら、その根拠を確認したほうがよいと思います。
まとめ
- 「止まった」と感じたら、まず①家全体の停電か ②表示は消えているか出ているか ③発電量はゼロか少ないかの3点を確認する
- 電圧上昇抑制は故障ではない。電気事業法施行規則第38条の維持すべき値(100V→101V±6V、200V→202V±20V)を守るため、パワコンが自分で出力を絞る動作
- 出方は「晴れた日の昼だけ・グラフの頭が平ら/ギザギザ」。1日のグラフで判別できる
- 東北では引込線が長い・近所に太陽光が多い・昼に留守の条件が重なると出やすい
- 住宅用パワコンは系統連系規程により力率95%で運転するよう定められている(東北電力ネットワークの公式案内)。設定ミスではない
- 停電時に止まるのは単独運転検出という安全機能。復電後の再起動には数分かかる機種が一般的
- 本当に異常なのは①表示が消えて発電ゼロ ②同じエラーが毎日 ③一部系統だけゼロ ④異音・焦げ臭。とくに④は即停止
- 抑制が続くなら、記録→施工店→配電線側の調査→自家消費に寄せるの順で進める
太陽光は、置いてから10年20年と付き合う設備です。「よく分からない表示が出た」段階で気軽に聞ける相手がいるかどうかが、長い目で見るといちばん効いてきます。
当社では他社施工のお宅からのご相談もお受けしています。モニターの画面と発電量のグラフをお手元にご連絡ください。
※本記事は2026年8月13日時点の情報です。制度・規格・製品仕様は変更されることがあります。
出典
- 電気事業法施行規則 第38条(電圧及び周波数の値)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=407M50000400077
- 東北電力ネットワーク「太陽光発電設備を低圧配電線に連系するお客さまへ 低圧パワーコンディショナ(低圧PCS)の力率一定制御(力率値95%)の採用について」https://nw.tohoku-epco.co.jp/consignment/renew/pdf/022.pdf
- 東北電力ネットワーク「託送供給等約款別冊 系統連系技術要件」(2025年4月1日実施)https://nw.tohoku-epco.co.jp/consignment/pdf/8-1_13_250401.pdf
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監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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