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太陽光は「夏がいちばん発電する」わけではありません|屋根の熱で出力が2割落ちる仕組みと、東北の発電ピーク月【2026年版】

「こんなに暑いのに、5月より発電量が少ないんです。どこか壊れていませんか」

8月に入ると、毎年いただくご相談です。結論から申し上げると、ほとんどの場合、壊れていません。太陽光発電は「暑い日にいちばん発電する」仕組みではないからです。

太陽電池は光の量で発電しますが、温度が上がると出力が下がる性質を持っています。真夏の屋根の上でパネルは70〜80℃に達し、その状態では本来の出力から2割前後を失っています。これは故障ではなく、太陽電池という部品の物理的な性質です。

しかも、この「温度で落ちる分」は感覚論ではありません。国が定める住宅の省エネ性能の計算方法に、はっきりと式と係数が書かれています。誰でも同じ数字で計算できます。

この記事では、①国の計算式で温度損失が実際にいくつになるか、②設置のしかたで差が出ること、③東北の発電ピーク月は太平洋側と日本海側で違うこと、④夏に伸びない原因は温度だけではないこと、⑤見積りの発電量シミュレーションをどう読むか、を整理します。

スレート屋根の2面いっぱいに黒い太陽光パネルを敷き詰めた住宅を上から見た様子

▲ 当社施工事例:屋根一面に載せた太陽光パネル

まず結論:真夏の正午、出力は約2割落ちています

住宅の省エネ性能を判定するプログラムの技術資料(国立研究開発法人建築研究所)には、太陽光発電設備の発電量を計算する方法が定められています。そのなかに「太陽電池アレイの温度補正係数」という項目があります。

式は次の通りです。

温度補正係数 = 1 + 最大出力温度係数 ×(モジュール温度 − 25℃)

25℃が基準になっているのは、太陽電池の性能表示がセル温度25℃・日射強度1,000W/m²という標準試験条件(STC)で行われるためです。カタログに「出力5.5kW」と書いてあるのは、この25℃のときの数字です。

そして最大出力温度係数は、同資料で次のように定められています。

太陽電池の種類 最大出力温度係数
結晶シリコン系 −0.0041(1℃あたり −0.41%)
結晶シリコン系以外 −0.0020(1℃あたり −0.20%)

住宅用の太陽光パネルはほぼすべて結晶シリコン系ですから、1℃上がるごとに0.41%ずつ出力が減っていくと考えることになります。

では、真夏の屋根の上でパネルは何度になるのか。これも同じ資料に計算式があり、外気温と日射量、そして設置方式から求めます。

真夏の晴れた正午(外気温30℃・日射900W/m²)を、屋根置き形で計算すると——

  • モジュール温度:74.8℃
  • 温度補正係数:0.796(=約20%の損失

外気30℃でも、パネルは75℃近くまで上がります。手で触れないくらいの熱さです。この状態で、5.5kWのシステムは4.4kW相当まで落ちている計算になります。


春と夏と冬で、どれだけ違うのか

同じ式で、季節ごとに計算してみます(いずれも屋根置き形・晴天正午の想定)。

条件 モジュール温度 温度損失
真夏(外気30℃・日射900W/m²) 74.8℃ 約20.4%
5月(外気20℃・日射900W/m²) 64.8℃ 約16.3%
4月(外気15℃・日射850W/m²) 57.2℃ 約13.2%
真冬(外気3℃・日射700W/m²) 37.4℃ 約5.1%
夏の曇り(外気28℃・日射300W/m²) 41.6℃ 約6.8%

(建築研究所「住宅・住戸の省エネルギー性能の判定プログラム」技術資料 第九章の式にもとづく試算。風速は資料の規定どおり0m/sとして計算)

見ていただきたいのは2点です。

1つ目。真夏と4月で、温度損失に7ポイントの差があります。日射量が同じなら、4月のほうが同じパネルでたくさん発電します。「暑い=よく発電する」ではないことが、数字ではっきりします。

2つ目。夏でも曇りの日は温度損失が小さい(約6.8%)。日射が弱いのでパネルが熱くならないためです。もちろん発電量そのものは晴天より少ないのですが、「持っている力のうち何割を出せているか」でいえば、曇りの日のほうが効率はいいことになります。

冬の損失が5%程度しかないのも重要です。東北の冬は日射量が少ないので発電量そのものは減りますが、パネルの性能という意味では冬が一番いい状態です。寒冷地は太陽光に向かない、という思い込みは、この点では逆です。

金属屋根に設置された太陽光パネルと、端部に並ぶ固定金具の俯瞰

▲ 当社施工事例:金属屋根への太陽光設置


設置のしかたで、夏の損失は変わります

先ほどの計算に出てきた「設置方式」は、実は結果を大きく動かします。同資料は設置方式を3つに分け、それぞれ別の係数を割り当てています。

設置方式 条件 真夏(外気30℃・日射900W/m²)のモジュール温度 温度損失
架台設置形 屋根と空隙を設けて間接に設置(屋根置き形以外) 71.2℃ 約18.9%
屋根置き形 屋根と平行に空隙を設けて間接に設置 74.8℃ 約20.4%
その他(屋根材一体形・壁面など) 屋根材一体形、壁用・窓用アレイなど 81.1℃ 約23.0%

理由は単純で、パネルの裏側に空気が流れるかどうかです。

屋根材一体形(屋根そのものがパネルになっているタイプ)は、見た目がすっきりして雨仕舞いも一体化していますが、裏に空気の通り道がありません。熱がこもるぶん、真夏には屋根置き形より2.6ポイント多く失う計算になります。

逆に、陸屋根や地上に架台を組んで空隙を確保する方式は、夏に有利です。

では屋根置き形が損なのかというと、そう単純でもありません。東北の住宅では傾斜屋根が大半で、屋根に平行に載せる方式が現実的です。ここで効いてくるのは離隔の取り方と換気で、パネルを軒先ぎりぎりまで敷き詰めるより、端部に空きを取るほうが結果的に有利に働くことがあります。屋根の端を空ける理由については「うちの屋根は狭いから無理」と言われた方へで詳しく書きました。

なお、この差は「どちらかを選べば必ず得」という話ではなく、同じ容量なら夏の出方が少し違うという程度のものです。屋根材一体形を検討中の方が、これを理由にやめる必要はありません。


東北の発電ピーク月は、太平洋側と日本海側で違います

ここからが東北にお住まいの方に一番関係するところです。

気象庁の平年値(1991〜2020年の30年平均)で、仙台と秋田の月別日照時間を並べます。

仙台(時間) 秋田(時間)
1月 149.0 39.0
2月 154.7 64.3
3月 178.6 121.5
4月 193.7 168.6
5月 191.9 184.9
6月 143.7 179.5
7月 126.3 150.3
8月 144.5 186.9
9月 128.0 160.8
10月 147.0 143.1
11月 143.4 83.2
12月 136.3 45.3
年間 1,836.9 1,527.4

(出典:気象庁「平年値(年・月ごとの値)」)

仙台のピークは4月(193.7時間)と5月(191.9時間)です。8月は144.5時間しかなく、4月より約25%少ない。ここに温度損失の差(4月13.2%、真夏20.4%)が重なるので、仙台では春が一年の稼ぎ頭になります。7月が126.3時間しかないのは梅雨の影響です。

一方、秋田のピークは8月(186.9時間)です。5月(184.9時間)とほぼ並びますが、最多は8月。日本海側は冬の日照が極端に少なく(12月45.3時間、1月39.0時間)、そのぶん夏に集中します。

つまり、日本海側にお住まいなら「夏がいちばん発電する」という感覚はおおむね合っています。この記事の話が特に当てはまるのは、仙台をはじめとする太平洋側です。

そしてもう一つ。年間の日照時間は仙台1,836.9時間、秋田1,527.4時間で、同じ東北でも約2割違います。見積りの発電量シミュレーションが「東北の平均値」で作られている場合、この地域差が反映されていないことがあります。日照の地域差と年間発電量の目安は東北・雪国の太陽光は本当に発電する?で扱っています。


夏に伸びない原因は、温度だけではありません

温度以外にも、夏に発電量が期待どおりにならない要因がいくつかあります。切り分けができると、故障かどうかの判断が早くなります。

1. 梅雨と夕立(太平洋側で最大の要因)

仙台の7月の日照時間126.3時間は、12月(136.3時間)より少ない数字です。梅雨の影響は温度損失より大きく効きます。「7月に発電量が落ちた」の第一容疑者は温度ではなく天気です。

2. 電圧上昇抑制

昼間、近所一帯の太陽光が一斉に発電すると、電線の電圧が上がります。電気事業法施行規則第38条では、標準電圧100Vの供給電圧を101Vの上下6V(95〜107V)に維持するよう定められており、パワコンはこの上限を超えないよう自ら出力を絞ります。

これが起きると、晴れているのに昼のピークだけ頭が平らに削られたグラフになります。故障ではありませんが、続くようなら電力会社と施工店に相談する余地があります。系統側の出力制御とは別物で、その違いは「東北は出力制御が厳しい」と言われたらにまとめました。

3. パワコン自身の温度上昇

パワコンにも動作温度の上限があり、多くの機種は周囲温度が高すぎると保護のために出力を抑えます。西日の当たる外壁、風の通らない狭い場所、直射日光が当たる位置に設置されていると、真夏に効いてきます。

お使いの機種の仕様は取扱説明書に書かれています。設置場所の日よけを検討する価値があるかどうかは、施工店に見てもらってください。

4. パネルの汚れ

黄砂、花粉、鳥のフンなど。ただし、日本の住宅用では雨で流れる程度のものが大半で、洗浄が必要なケースは多くありません。「汚れているので洗浄しましょう」という飛び込みの営業には注意してください。点検・洗浄の要否は太陽光は「つけてから」いくらかかる?で整理しています。

5. 影

夏は太陽高度が高いので、冬より影の影響は小さくなります。逆に「冬だけ落ちる」なら影を疑います。方位や影の考え方は「北向きの屋根だから無理」と断られた方へをご覧ください。

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では、どう判断すればいいのか

「夏に落ちるのは正常」と分かったうえで、本当に異常な場合を見逃さないための見方を挙げます。

比べるのは「前年の同じ月」です

前月と比べても意味がありません。日射も気温も違うからです。前年同月比で見て、天気が大きく違わないのに20%以上落ちていれば、点検を検討する水準です。

製品評価技術基盤機構(NITE)も、太陽光発電設備の事故を防ぐ日常の確認として「毎月の発電量を前年同月と比較する」ことを消費者に呼びかけています。

一日のグラフの形を見る

  • 山のてっぺんが平らに削られている → 電圧上昇抑制やパワコンの温度保護の可能性
  • 山の形は正常だが全体に低い → 天気、または汚れ・劣化
  • 朝や夕方だけ極端に落ちる → 影
  • ある日を境に一段下がったまま → ストリングの一部停止など、故障の可能性

1年目の夏は「基準づくり」と考える

設置初年度は比べる相手がありません。この1年は、毎月の発電量を記録して自分の家の基準をつくる年と考えてください。2年目以降、その記録がそのまま故障の早期発見に使えます。


見積りの発電量シミュレーションは、どこを見るか

契約前にいただく発電量シミュレーションについて、確認したい点が3つあります。

1. どの地点のデータを使っているか

前述の通り、仙台と秋田では年間日照時間が約2割違います。「東北」で一括りにした数字なら、根拠を聞いてください。

2. 温度損失を見込んでいるか

年間発電量が「システム容量 × 年間日射量 × 1.0」のような計算になっていたら、温度損失も配線損失もパワコンの変換損失も見込んでいないことになります。国の計算方法でも、温度補正のほかにインバータ回路補正係数0.90、経時変化補正係数などを掛けています。総合設計係数が0.8前後になっているのが自然です。

3. 前提条件が書かれているか

方位、傾斜角、影の有無、想定した設置方式。これらが書かれていないシミュレーションは検証できません。

金額の妥当性と発電量の前提は、セットで見る必要があります。当社が運営する「ソラカルテ」では、屋根の条件から費用と容量の概算をご自身で確認できます。営業を受ける前に自分で当たりを付けておくと、話が早くなります。見積り比較の考え方は「一番安い見積り」で選ぶと損をする?もあわせてご覧ください。


夏の発電を「使い切る」ほうが効きます

温度損失は、設置してしまえば後から減らせるものではありません。それより効くのは、発電した電気をどう使うかです。

夏は日射量そのものはあるので、絶対量としての発電量は冬よりずっと多くなります。この電気を売電単価の安い時代に売るより、エアコンやエコキュートで自家消費に回したほうが手元に残ります。夏の運用の具体策は夏の電気代は「設定」で変わるに、料金プランの選び直しは太陽光や蓄電池を入れたら、電気の料金プランは変えるべき?にまとめています。


よくあるご質問

Q1. 温度に強いパネルを選べば解決しますか。

A. 一定の差はあります。パネルの性能表には「最大出力温度係数」が必ず記載されており、製品によって値が違います。国の計算方法は結晶シリコン系を一律 −0.41%/℃ としていますが、これはあくまで標準的な値で、実際の製品はカタログの記載値を確認してください。ただし、この差だけで機種を決めるのは順番が違います。寒冷地では低温側の動作条件、積雪荷重、保証の内容のほうが効きます。パネル選びの基準は太陽光パネルは変換効率で選ぶと損をするにまとめました。

Q2. パネルに水をかけて冷やせば発電量は増えますか。

A. おすすめしません。理論上は温度が下がれば出力は戻りますが、熱くなったガラスに急に水をかけると割れる恐れがあり、屋根に上がること自体が危険です。散水設備の設置費用と、得られる電気の価値も釣り合いません。

Q3. 「夏に落ちる」と説明しない業者は不誠実ですか。

A. そこまでは言えません。年間の発電量シミュレーションには温度損失が織り込まれているのが普通で、月ごとの内訳まで説明しないことは珍しくありません。問題なのは説明の有無ではなく、シミュレーションの前提条件を聞いたときに答えられるかどうかです。聞いて答えられるなら、それで十分だと思います。


まとめ

  • 太陽電池の性能表示はセル温度25℃が基準。温度が上がると出力は下がり、結晶シリコン系は国の計算方法で1℃あたり−0.41%とされている
  • 真夏の晴天正午(外気30℃・日射900W/m²)、屋根置き形のパネルは74.8℃まで上がり、約20%の出力損失になる。4月なら約13%で、その差は7ポイント
  • 設置方式でも差が出る。同条件で架台設置形18.9%/屋根置き形20.4%/屋根材一体形など23.0%。裏側に空気が流れるかどうかの違い
  • 東北の発電ピーク月は太平洋側と日本海側で違う。仙台は4〜5月(8月は4月より約25%少ない日照)、秋田は8月。年間日照時間も仙台1,836.9時間と秋田1,527.4時間で約2割違う
  • 夏に伸びない要因は温度だけでなく、梅雨・電圧上昇抑制・パワコンの温度保護・汚れ・影。切り分けは「前年同月比」と「一日のグラフの形」で行う
  • 見積りのシミュレーションは、地点データ・損失の見込み・前提条件の3点を確認する

「今年の8月は去年より少ない」——それだけでは異常とは言えません。まず前年同月と、そのときの天気を並べてみてください。それでも説明がつかないときに、初めて点検の話になります。

判断に迷われたら、発電量のデータをお持ちください。当社では他社施工のお宅もご相談をお受けしています。

※本記事は2026年8月12日時点の情報です。制度・規格・製品仕様は変更されることがあります。

出典

その見積書、本当に妥当ですか?(ソラカルテ)

当社が運営する「ソラカルテ」では、太陽光・蓄電池の見積書をその場で無料AI診断できます。電話番号の登録は不要です。

監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら

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