「去年より発電していない気がする」と思ったら|前年比で判断してはいけない理由と、設備利用率13.7%で確かめる方法【東北・2026年版】

「モニターの数字を去年と見比べたら、今年のほうが少ないんです。パネルがもう劣化しているんでしょうか」
太陽光を設置して数年経ったお客様から、いちばん多くいただくご質問がこれです。そしてほとんどの場合、お答えは「まだ何とも言えません」になります。冷たいお返事に聞こえるかもしれませんが、理由があります。
前年と比べるという方法そのものが、この判断には向いていないのです。
この記事では、発電量が減ったかどうかを判断するための物差しと、減っていた場合に原因を切り分ける順番を整理します。数字はすべて、気象庁と経済産業省の公表資料で確認できるものだけを使います。2026年8月14日時点の情報です。

▲ 当社施工事例:屋根2面への太陽光設置
仙台の日照時間は、年によって385時間ちがいます
まず、これを見てください。気象庁が公表している仙台の年間日照時間の、直近11年分の実測値です。
| 年 | 年間日照時間 |
|---|---|
| 2015年 | 2,102.8時間 |
| 2016年 | 1,895.7時間 |
| 2017年 | 1,909.5時間 |
| 2018年 | 1,998.4時間 |
| 2019年 | 2,056.0時間 |
| 2020年 | 1,797.2時間 |
| 2021年 | 1,972.8時間 |
| 2022年 | 1,951.9時間 |
| 2023年 | 2,181.7時間 |
| 2024年 | 1,976.9時間 |
| 2025年 | 2,092.9時間 |
いちばん少なかった2020年が1,797.2時間、いちばん多かった2023年が2,181.7時間。その差は384.5時間です。少ないほうを基準にすると、約21%の開きがあります。
隣り合う年で見ても、振れ幅は小さくありません。
- 2019年(2,056.0時間)→ 2020年(1,797.2時間)で約12.6%の減
- 2022年(1,951.9時間)→ 2023年(2,181.7時間)で約11.8%の増
- 2023年(2,181.7時間)→ 2024年(1,976.9時間)で約9.4%の減
ちなみに1991〜2020年の30年平均(平年値)は1,836.9時間です。
つまり、前年比±10%は「天気の話」の範囲です
太陽光の発電量は日射量にほぼ比例して動きます。日照時間そのものが年で1割前後動くのですから、発電量が前年比で1割減っていても、それだけでは異常の証拠になりません。
「去年より減った=劣化した」と結論を出してしまうと、実際には天気が違っただけ、ということが本当によく起きます。逆に、天気が良い年だったのに前年並みだったという場合のほうが、よほど注意すべき信号です。
そして残念ながら、この「前年比で減っている」という一点だけを根拠に、点検や機器交換を勧める営業も存在します。訪問販売への向き合い方は「今日中なら値引きします」で契約してしまったらにまとめました。
比べるべきは「kWh」ではなく「kWh/kW」です
では、何と比べればいいのか。答えは、1kWあたりの年間発電量です。
計算はとても簡単です。
年間発電量(kWh)÷ パネルの設置容量(kW)= 年間kWh/kW
たとえば5.4kWの設備で年間6,500kWh発電したなら、6,500 ÷ 5.4 = 約1,204kWh/kW です。
この数字にすると、容量の違う設備どうしでも、全国の平均値とでも比べられるようになります。見積書を万円/kWに直して相場と比べる考え方(その見積書、高いのか安いのか)と、まったく同じ発想です。
国が使っている物差しは「設備利用率13.7%」
比較の相手になる数字は、経済産業省の調達価格等算定委員会が公表しています。FITの買取価格を決めるために、実際に設置された住宅用太陽光のデータを毎年集計しているものです。
2026年2月5日に取りまとめられた「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」から、住宅用(10kW未満)の設備利用率を抜き出すと次のようになります。
| 数字 | 値 |
|---|---|
| 2026年度の想定値 | 13.7% |
| 2025年1月〜8月に収集したシングル発電案件の平均値 | 14.1% |
| 過去4年間に検討した数値の平均 | 14.2% |
設備利用率は「1年中フル出力で動き続けた場合に対して、実際どれだけ発電したか」の割合です。1年は8,760時間ですから、年間kWh/kWに直すとこうなります。
- 想定値13.7% → 約1,200kWh/kW/年
- 直近実績14.1% → 約1,235kWh/kW/年
さきほどの5.4kWで6,500kWhの例は約1,204kWh/kWですから、国の想定値とほぼ同じということになります。
この物差しの限界も正直に書いておきます
大事な注意が3つあります。
① これは全国平均です。東北の値ではありません。方位・傾斜・積雪・影の条件で上下します。北面や東西面に載っている場合の考え方は「北向きの屋根だから無理」と断られた方へ、雪国での発電量の見方は東北・雪国の太陽光は本当に発電する?をご覧ください。
② 数年分ならすとより確かになります。1年だけの数字は天気に振り回されます。3年分の平均どうしを比べるのが、いちばん誤りにくい方法です。
③ 経年劣化率の公式な数値は、この資料には載っていません。調達価格等算定委員会の2026年2月の意見には、住宅用の出力低下率の前提は記載されていませんでした。ネット上には「年◯%劣化する」という数字がいろいろ出回っていますが、当社としては公的に確認できない数値をご案内しません。保証の考え方については蓄電池は何年もつ?と同様に、メーカーの出力保証の条件そのものを読むのが確実です。
東北の発電の山は「4月」です。夏ではありません
もうひとつ、月ごとに比べるときに知っておいていただきたいことがあります。仙台の月別日照時間の平年値(1991〜2020年)です。
| 月 | 日照時間 | 月 | 日照時間 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 149.0時間 | 7月 | 126.3時間 |
| 2月 | 154.7時間 | 8月 | 144.5時間 |
| 3月 | 178.6時間 | 9月 | 128.0時間 |
| 4月 | 193.7時間 | 10月 | 147.0時間 |
| 5月 | 191.9時間 | 11月 | 143.4時間 |
| 6月 | 143.7時間 | 12月 | 136.3時間 |
いちばん日が照るのは4月(193.7時間)、次が5月(191.9時間)です。そしていちばん少ないのが7月(126.3時間)、次が9月(128.0時間)。夏は日が長いのに、梅雨と夏の雲で日照時間そのものが落ちます。
さらに太陽光パネルは温度が上がると出力が下がります。この仕組みは太陽光は「夏がいちばん発電する」わけではありませんで詳しく解説していますが、日照時間の面からも、夏が最盛期ではないということです。
「8月なのに思ったより発電していない」というご相談を毎年いただきますが、仙台の8月の日照時間は144.5時間で、4月より50時間近く少ないのです。比べる相手は前月ではなく、去年の同じ月にしてください。
なお仙台は雪の降る日が年間59日(平年値。1月21日、2月18日、3月11日、12月9日、4月1日)あります。冬に積雪でパネルが覆われた日数は年によって大きく違いますから、冬の月だけを取り出して前年比を見るのは、いちばん誤差が大きい見方になります。

▲ 当社施工事例:屋根の片面への太陽光設置
減っていた場合、原因を4つに切り分けます
年間kWh/kWで比べて、明らかに落ちている——そのときに疑う順番です。上から順に、費用がかからないものから確認してください。
① 天気(まず無料で確認できます)
気象庁の「過去の気象データ検索」で、お住まいの地域に近い観測地点の日照時間を、月別・年別に無料で見られます。発電量が1割減っていて、日照時間も1割減っていたなら、設備は正常です。ここで終われるケースが実際にいちばん多いです。
② 影(東北の冬はとくに効きます)
- 隣に家が建った
- 庭木が伸びた
- アンテナや新しい室外機のカバーができた
太陽の高さは季節で変わり、冬は南中高度が低くなるぶん影が長く伸びます。夏は問題なかった影が、11月から2月だけパネルにかかる、ということが起こります。「冬の月だけ落ちている」なら、影を疑ってください。
太陽光は1枚のパネルに影がかかると、その回路(ストリング)全体の出力が引きずられます。屋根の割り付けの考え方は「うちの屋根は狭いから無理」と言われた方へでも触れています。
③ 汚れ
黄砂、鳥のふん、融雪後に流れた泥、近くの工事の粉じん。傾斜のある屋根では雨である程度流れますが、パネル下端のフレーム際に泥が溜まることがあります。
ただし、ご自身で屋根に上って洗うことは絶対にしないでください。転落事故のリスクが、発電量の数%とは比べものになりません。
④ 機器(ここで初めて業者を呼びます)
- ストリングの断線・接続不良(特定の系統だけ発電量が落ちるのが特徴)
- パワーコンディショナの不調
- 電圧上昇抑制による出力の抑制
このうち電圧上昇抑制は故障ではありません。パワコンが系統の電圧を守るために自分で出力を絞る、正常な動作です。東北では実際によく起きます。切り分けの手順は「太陽光が止まっている」と思ったらにまとめました。
モニターで「系統別」を見ると、異常はいちばん見つけやすい
原因の切り分けで最も効率がいいのは、ストリング(回路)ごとの発電量を見ることです。
- 全系統がそろって下がっている → 天気、または全体にかかる要因
- 特定の1系統だけ下がっている → 機器・接続の異常の可能性が高い
- 特定の時間帯だけ頭打ちになる → 電圧上昇抑制、または出力制御
メーカーのモニターやアプリで系統別の表示ができるものが多くあります。ご自宅の機種で表示できるかどうか、一度確認しておくと、いざというときの初動が早くなります。
点検の費用感も、公的な資料に出ています
調達価格等算定委員会が一般社団法人太陽光発電協会に行ったヒアリング調査(同じく令和8年2月5日の意見)では、5kWの設備を想定した場合として次の数字が示されています。
- 発電量維持や安全性の確保の観点から、3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨されている
- 1回あたりの点検費用の相場は約3.8万円程度(前年度のヒアリングでは約4.1万円程度)
- パワコンは20年間で一度は交換され、38.4万円程度が一般的な相場(前年度は42.3万円程度。上昇の要因として人件費増等が考えられる)
一方で、2025年設置案件の定期報告データを分析した運転維持費の平均値は1,045円/kW/年で、2026年度の想定値(3,000円/kW/年)を下回っています。委員会の資料には、定期報告データの88%が0円/kW/年であり、その原因として対象年に点検費用や修繕費用が発生していない案件が多く存在する可能性が考えられる、との注記が付いています。
つまり、実際には点検にお金をかけていないお宅が多いというのが実態です。維持費全体の考え方は太陽光は「つけてから」いくらかかる?で整理しています。
なお、同じ資料では余剰売電比率の平均値は64.8%(中央値60.7%)とされています。売電量だけを見て「減った」と感じている場合、発電が減ったのではなく自家消費が増えただけということもあります。エアコンの使い方や蓄電池の運転設定を変えた年は、ここを疑ってください。
よくあるご質問
Q1. 何%落ちていたら、業者を呼ぶべきですか?
A. 明確な基準を申し上げるのは難しいのですが、当社では「日照時間で説明がつかない差が、3年続けて出ている場合」を目安にしています。単年で1割程度の差は天気の範囲です。逆に、特定の1系統だけが落ちている場合は、単年でもすぐご相談ください。
Q2. モニターの数字と、電力会社の検針票の数字が合いません。
A. 見ているものが違います。モニターは発電量、検針票に載るのは売電量です。自家消費した分は売電量に入りませんから、両者は一致しません。比較には必ずモニターの発電量を使ってください。
Q3. 「無料で発電量を診断します」と訪問がありました。受けてもいいですか?
A. 発電量の確認だけなら、まずはご自身でモニターの数字と気象庁の日照時間を見比べていただくのが確実で、費用もかかりません。屋根に上げてしまうと、その場で契約という流れになりやすいのが実情です。判断を急がされたときの対処は「今日中なら値引きします」で契約してしまったらをご覧ください。
まとめ
- 仙台の年間日照時間は直近11年で1,797.2〜2,181.7時間(差384.5時間・約21%)。前年比±10%程度は天気の範囲で、劣化の証拠にはならない
- 比べるべきは総kWhではなく年間kWh/kW。国の想定値は設備利用率13.7%(約1,200kWh/kW/年)、直近実績は14.1%(約1,235kWh/kW/年)
- ただしこれは全国平均。3年分の平均どうしで比べると誤りにくい。住宅用の経年劣化率は公的資料に記載がないため、当社では数値をご案内しない
- 仙台の日照時間の山は4月(193.7時間)、谷は7月(126.3時間)。夏が最盛期ではない
- 原因は天気 → 影 → 汚れ → 機器の順に、費用のかからないものから切り分ける。特定の1系統だけ落ちているなら機器の異常を疑う
- 売電量だけを見て「減った」と感じている場合、自家消費が増えただけのこともある(余剰売電比率の平均は64.8%)
※本記事は2026年8月14日時点の情報です。気象データおよび制度の数値は、出典元の最新版をご確認ください。
出典
- 気象庁「仙台(宮城県)平年値(年・月ごとの値)」 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=34&block_no=47590
- 気象庁「仙台(宮城県)年ごとの値」 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/annually_s.php?prec_no=34&block_no=47590
- 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(令和8年2月5日) https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20260205_1.pdf
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監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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