停電の夜、スマートフォンは何回充電できるか|モバイルバッテリー・車・蓄電池を「Wh」で数えると、足りないのは量ではなく「回路」と「温度」でした【東北・2026年版】

先に結論
スマートフォン1台の電池は、Whに直すと18Wh前後です。
10,000mAhのモバイルバッテリーで満充電できるのは、1回強が目安です。
家の蓄電池なら量は十分。問題は「そのコンセントが停電時に生きているか」です。
東北の冬は、0℃を下回る寒さと、雪に埋まった車の一酸化炭素に気をつけてください。

▲図解:停電時のスマホ充電は「Wh」で数え、回路と温度を確かめる
大雪の夜、家の明かりがふっと消えます。暖房も止まり、手元で光っているのはスマートフォンの画面だけ。右上の電池の表示は、もう20%を切っています。
停電の情報を調べるのも、家族と連絡を取るのも、懐中電灯の代わりも、いまはこの1台です。「あと何回、充電できるのか」——ここが分からないまま夜を越すのは、心細いものです。
この記事では、スマートフォン、モバイルバッテリー、車、家の蓄電池を、同じ「Wh(ワット時)」という単位にそろえて数えます。数えてみると、東北の冬の停電で足りなくなるのは、電気の量よりも別のものだと分かります。
スマホの電池を「Wh」に直すと18Wh前後
スマートフォンの電池の大きさは、メーカーの仕様表に「mAh(ミリアンペア時)」で書かれています。
| 機種 | 公式の電池容量 |
|---|---|
| Google Pixel 10 | 標準 4,970mAh(最小 4,835mAh) |
| シャープ AQUOS sense10 | 5,000mAh(内蔵電池の標準容量) |
| Apple iPhone 17 | mAh・Whの記載なし(ビデオ再生 最大30時間) |
出典:Google ストア「Pixel 10 の技術仕様」、シャープ「AQUOS sense10 スペック」、Apple「iPhone 17 技術仕様」(2026年10月10日確認)
ただ、mAhのままでは、モバイルバッテリーや蓄電池と比べられません。そこで使うのがWhです。国土交通省は、モバイルバッテリーの機内持ち込みの案内で、次の式を示しています。
ワット時定格量 (Wh)=定格容量 (mAh)×定格電圧 (V)÷1,000
例:27,000mAh、3.7V → 99.9Wh(国土交通省 2026年4月14日 報道発表資料)
スマートフォンの電池の電圧は、どの機種も公式ページに書かれていません。そこで、国土交通省の例と同じ3.7Vで仮に計算します。
- Pixel 10:4,970mAh × 3.7V ÷ 1,000 = 約18.4Wh
- AQUOS sense10:5,000mAh × 3.7V ÷ 1,000 = 約18.5Wh
つまり、いまのスマートフォン1台は、満充電でおよそ18Wh前後と見ておけば、大きくは外れません。この「18Wh」を物差しにして、手元の電源を数えていきます。
モバイルバッテリー10,000mAhで、満充電は1回強
いちばん手軽な備えは、モバイルバッテリーです。内閣府の防災情報のページも、モバイルバッテリーを「災害時にも役立つ予備電源」として挙げています。
よく売られている10,000mAhのモバイルバッテリーを、同じ式でWhに直すと、
- 10,000mAh × 3.7V ÷ 1,000 = 37Wh
スマートフォン18Whの約2台分です。ところが、実際に2回満充電できるわけではありません。
モバイルバッテリーの大手メーカーであるAnkerは、公式FAQでこう説明しています。
充電回路の損失や電圧の変換など、充電における制御の関係で使用中に電力が30%~45%消費されます。
そのため、容量10,000mAhのモバイルバッテリーでは、通常約5,500mAh~6,500mAh相当でご使用いただけます。
※これはメーカーの説明で、官公庁の資料ではありません。製品によって変わります。
スマートフォンに渡せるのは、表示容量の約6割です。5,500〜6,500mAh相当を、Pixel 10の4,970mAhで割ると、1.1〜1.3回。10,000mAhで満充電は「1回強」が現実的な目安です。
家族の人数で数える
4人家族が1人1回ずつ満充電したいなら、10,000mAhでは3〜4台必要です。
「1家に1台」では、ひと晩で使い切る計算になります。
充電は起きているあいだに
モバイルバッテリーは、事故がいちばん多いリチウムイオン電池製品でもあります。製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2021年から2025年までのリチウムイオン電池製品の事故は2,140件で、製品別ではモバイルバッテリーが最多でした。
- PSEマークのあるものを選ぶ:経済産業省は「平成31年2月1日以降は、PSEマークの無いモバイルバッテリーは販売禁止」としています
- 充電はなるべく起きているときに:消費者庁も「充電は、安全な場所で、なるべく起きている時に行いましょう」と呼びかけています
停電の夜は、ふだんより暗く、手元が見えにくくなります。膨らんだり熱くなったりしたものは使わないと、家族で決めておいてください。
車で充電するなら、マフラーの雪を先にどける
車のUSBやシガーソケットは、停電中も使える身近な電源です。ただし、東北の冬は、ここに命に関わる落とし穴があります。
JAF(日本自動車連盟)は、車が雪に埋まった状態でエンジンをかけ続けたときの一酸化炭素(CO)濃度を測っています。
| 条件(JAF テスト) | 結果 |
|---|---|
| 2015年2月・旭川 対策なし | 開始16分後に短時間暴露限度の400ppm、その6分後に測定上限の1,000ppm |
| 同 マフラー周辺を除雪 | 終始COはほとんど検知されなかった |
| 同 窓を5cmほど開ける | 約40分後に400ppm、その後すぐに800ppm台 |
| 2021年2月・山形 ガソリン車 | 1分24秒で警報値の50ppmに到達 |
出典:JAF ユーザーテスト(雪に埋まった車の一酸化炭素/雪の中での車内環境)
窓を少し開けるだけでは足りません。国土交通省 北陸地方整備局の雪害対策のページも、「マフラー付近が埋まらないように定期的に除雪し、窓を少し開けて換気」するよう書いています。
車で充電するときの順番
① エンジンをかける前に、マフラーのまわりの雪をどける
② 雪が降り続いているあいだは、こまめに見に行く
③ 車内で眠らない。充電が終わったらエンジンを止める
車とEVの給電の違いは、停電時のEV・V2L・V2Hの記事にまとめています。
家の蓄電池なら量は十分。見るのは「生きているコンセント」
家庭用蓄電池の容量は、kWh(キロワット時)で書かれています。1kWh=1,000Whです。たとえば使える容量が5kWhなら5,000Wh。スマートフォン18Whとは、桁がまったく違います。
つまり、蓄電池がある家では、スマホの充電に使う電気の「量」は、ほとんど問題になりません。問題になるのは、次の2つです。
停電中に使えるのは「決められたコンセント」だけのことがある
蓄電池には、停電時に家全体へ送る「全負荷型」と、あらかじめ決めた回路だけに送る「特定負荷型」があります。特定負荷型では、ふだん使っているコンセントの多くが、停電中は使えません。
停電時の出力も、機種ごとに上限があります。
| 機器の例 | 停電時の出力(公式) |
|---|---|
| ニチコン ESS-U4X | 片相1.5kVA、合計3.0kVA |
| オムロン KPAC-B(特定負荷) | 2,000VA以下(合計は500W程度に抑えることを推奨) |
出典:ニチコン「ESS-U4シリーズ」製品ページ、オムロン ソーシアルソリューションズ 停電時の使い方(KPAC-B)
スマートフォンの充電器は、この上限から見ればごく小さな負荷です。大事なのは、「停電のとき、どのコンセントに挿せばよいか」を、停電する前に家族全員が知っていることです。夜中に暗い家の中で探すことになります。全負荷と特定負荷の違いは全負荷・特定負荷の記事に書きました。
太陽光だけの家は「自立運転コンセント」、ただし昼間だけ
蓄電池がなく、太陽光発電だけがある家にも、停電時に使える「自立運転用コンセント」があります。メーカーの資料では、上限は1,500Wです。
- シャープ:「最大で 1500W まで」
- オムロン:「最大 15A(合計で 1500VA)」
スマートフォンの充電には十分な大きさです。ただし、発電しているあいだしか使えません。夜は使えず、パネルに雪が積もった日も発電しません。
東北の冬の現実
大雪の停電は、パネルが雪に覆われている日に起きやすい。
太陽光の自立運転は「晴れた昼に、まとめて充電する」ものと考え、夜の分はモバイルバッテリーに貯めておきます。
自立運転への切り替えは、ふだん一度もやったことがないと、停電の当日には迷います。家電から必要な容量を逆算する考え方は、停電時に何を何時間動かせるかの記事にあります。
0℃を下回ると、充電そのものが止まる
東北の冬の停電で、もうひとつ見落とされやすいのが温度です。
スマートフォンのメーカーは、使える温度をはっきり決めています。
- Apple:iPhoneは「周辺温度が0℃~35℃の場所で使用するように設計」。低温になりすぎると「充電されなくなったり、充電が停止したり」することがある
- Google:Pixelは「0°C 未満または 35°C を超える環境で、デバイスを使用したり充電したりしないでください」。「0°C を下回ると、突然シャットダウンすることがあります」
NITEも、「冬場の車内などの低温となる場所に長時間放置する」ことを、リチウムイオン電池に異常が起きうる使い方として挙げています。
暖房が止まった家の玄関や車内は、真冬には0℃を下回ることがあります。電池の残量が十分あっても、冷えた端末は充電できない、急に電源が落ちる——量ではなく温度で使えなくなるのです。
冷えから守る3つのこと
・スマートフォンとモバイルバッテリーは、上着の内ポケットなど体の近くに置く
・冷えきった端末は、すぐに充電せず、室温に戻ってから充電する
・車内に置きっぱなしにしない
停電の情報は、電池が残っているうちに
最後に、スマートフォンの電池を何に使うかです。
東北電力ネットワークは、無料の「停電情報通知アプリ」で、東北6県と新潟県の停電・復旧情報をスマートフォンに知らせる仕組みを用意しています。登録できるのは最大10地点で、自宅のほか実家などを入れておけます。
停電した直後に「うちだけか、地域全体か」を確かめる順番は、停電したら、まず確かめる順番の記事にまとめました。家のWi-Fiが止まったときの通信の考え方は停電とWi-Fiの記事にあります。
電池が少ないときは、画面を暗くし、使わないアプリを閉じ、情報の確認は時間を決めてまとめて行う。「調べ続ける」より「決めた時刻に確かめる」ほうが、電池は長くもちます。
蓄電池の容量や、停電時にどこまで使えるようにするかで迷ったら、当社が運営する「ソラカルテ」の概算シミュレーターで、まず目安をつかむこともできます。
よくあるご質問
Q1. 20,000mAhのモバイルバッテリーなら、スマホを4回充電できますか。
A. 4回は難しいと考えてください。Wh に直すと74Whですが、メーカーの説明では使用中に30〜45%が失われます。同じ割合で数えると、18Wh前後のスマートフォンで2回強が目安です。正確な回数は、製品の説明書に書かれた「充電できる回数の目安」を確認してください。
Q2. 乾電池式の充電器は役に立ちますか。
A. 役に立ちます。内閣府の防災情報のページも、乾電池式なら停電しても使えると紹介しています。ただし、1回で満充電まではいかない製品が多いので、「つなぎ」として使い、電池の本数を多めに用意してください。
Q3. 蓄電池があれば、モバイルバッテリーはいりませんか。
A. あったほうが安心です。特定負荷型ではコンセントの場所が限られますし、機器の点検や故障で蓄電池が使えないこともあります。夜中に家族それぞれが手元で充電できるよう、モバイルバッテリーも1人1台を目安に用意しておくと、停電の夜の動き方が楽になります。
まとめ
- スマートフォン1台の電池は、国土交通省の式(mAh×V÷1,000)で18Wh前後(3.7Vで仮に計算)
- 10,000mAh(37Wh)のモバイルバッテリーは、変換の損失があるため満充電1回強が目安。家族の人数分を数える
- 車で充電するときは、先にマフラーの雪をどける。JAFのテストでは、対策なしで16分後に400ppm。窓を開けるだけでは足りない
- 家の蓄電池は量は十分。停電時に使えるコンセントを、家族全員が事前に知っておく
- 太陽光の自立運転コンセントは最大1,500W・発電中だけ。雪の日と夜は使えない
- 0℃を下回ると、充電が止まり、急に電源が落ちる。端末とバッテリーは体の近くに置く
- PSEマークのあるものを選び、充電は起きているあいだに
停電の夜に頼りになるのは、大きな電源よりも、「どこに挿すか」「どこに置くか」を決めてあることです。今日のうちに、自宅で停電時に使えるコンセントを1か所、家族と確かめてみてください。
※本記事は2026年10月10日時点で各公式サイトが公開している情報にもとづいています。製品の仕様は機種・時期によって異なります。ご使用の製品の取扱説明書もあわせてご確認ください。
出典
- 国土交通省「モバイルバッテリーの機内持込みに関する新たなルール」(2026年4月14日 報道発表資料) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001995959.pdf
- Google ストア「Pixel 10 の技術仕様」 https://store.google.com/jp/product/pixel_10_specs?hl=ja
- シャープ「AQUOS sense10 スペック」 https://jp.sharp/k-tai/products/aquos-sense10/specs/
- Apple「iPhone 17 - 技術仕様」 https://www.apple.com/jp/iphone-17/specs/
- Apple サポート「iPhone、iPad、iPod、Apple Watch を許容できる動作温度に保つ」 https://support.apple.com/ja-jp/118431
- Google Pixel ヘルプ(Pixel 10 の安全に関するガイド) https://support.google.com/pixelphone/answer/16275254?hl=ja
- Google Pixel ヘルプ(スマートフォンが低温になった場合) https://support.google.com/pixelphone/answer/15679416?hl=ja
- Anker Japan「よくあるご質問(モバイルバッテリーの充電回数)」(メーカーの説明)
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「PSマガジン」(リチウムイオン電池搭載製品の事故) https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2026fy/vol506_260807.html
- 製品評価技術基盤機構(NITE)資料(リチウムイオン電池の注意点) https://www.nite.go.jp/data/000096603.pdf
- 消費者庁「子ども安全メール」(モバイルバッテリーの注意) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20251219/
- 経済産業省「モバイルバッテリーの規制の概要」 https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/topics/mlb/mlb-outline.pdf
- JAF「雪に埋まった車の一酸化炭素中毒の危険性」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/co-poisoning
- JAF「雪の中での車内環境」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/snow_car_environment
- 国土交通省 北陸地方整備局 北陸雪害対策技術センター(雪道の備え) https://www.hrr.mlit.go.jp/hokugi/yukinavi/support/index.html
- ニチコン「ESS-U4シリーズ」 https://www.nichicon.co.jp/products/ess/series_ess-u4.html
- オムロン ソーシアルソリューションズ 停電時の使い方(KPAC-B) https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/energy/doc/po_mnu/power_outage_kpac-b.pdf
- オムロン ソーシアルソリューションズ 停電時の使い方(パワーコンディショナ) https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/energy/doc/po_mnu/power_outage_kpm.pdf
- シャープ 自立運転の注意事項 https://jp.sharp/sunvista/step1/jiritsu/g-attention.pdf
- 内閣府「それ、実は防災なんです。」 https://www.bousai.go.jp/jitsuha-bousai/
- 東北電力ネットワーク「停電情報通知アプリ」 https://nw.tohoku-epco.co.jp/app/
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監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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