台風が近づいたら、太陽光の家は何をする?|屋根に上らない前提でできる備えと、通過後にやる順番【東北・2026年版】

「台風が近づいているんですが、パネルって外したほうがいいんでしょうか」
毎年8月から9月にかけて、必ずいただくご相談です。
先にお答えすると、外せません。そして外す必要もありません。ご家庭でできる備えは、思っているよりずっと少ないのが実情です。
ただ、これは「何もしなくていい」という意味ではありません。やることが少ないぶん、通過したあとの手順のほうがずっと大事なのです。壊れているかどうかの見きわめ、近づいてはいけない状態の判断、連絡の順番、記録の残し方——ここを間違えると、直せるものが直せなくなったり、感電の危険に近づいてしまったりします。
この記事では、①そもそも太陽光の設備はどのくらいの風を想定して設計されているのか、②接近前の備え、③停電したときの判断、④通過後に踏む6つの手順、⑤「事故報告」が必要な家とそうでない家の違い、⑥東北で特に注意したい点、を整理します。

▲ 当社施工事例:屋根端部の固定金具と離隔
そもそも、どのくらいの風を想定して設計されているのか
まず「うちの太陽光はどれくらいの風なら大丈夫なのか」から押さえます。ここが分かると、無駄に不安になることも、逆に油断することもなくなります。
建築基準法の「基準風速」という数字がある
屋根の上の太陽光パネルと架台は、風圧力に対する安全性を確かめたうえで取り付けることになっています。その計算に使う基本の数字が、建築基準法施行令第87条第2項の基準風速(Vо)です。
条文では、Vоは「その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他の風の性状に応じて」毎秒30メートルから毎秒46メートルまでの範囲内で定めるとされています。実際の値は平成12年建設省告示第1454号に市町村ごとに書かれており、多くの自治体が建築指導のページで公表しています。
たとえば仙台市は、市の公式ページで次のように示しています。
仙台市のV0は次のとおりになっています。V0=30m/s (仙台市「構造計算で必要となる数値について」)
仙台市は下限の30m/sです。東北は全国的に見れば台風の直撃が少ない地域で、基準風速もおおむね低めに設定されています。ただし同じ東北でも、日本海側や海沿いでは高い値が定められている市町村があります。ご自分の市町村の値は、市役所・町村役場の建築指導(建築審査)のページで確認できます。
ここで大事なのは、Vоは「これ以上の風が絶対に吹かない」という数字ではないということです。過去の記録に基づいて定めた設計上の基準値であり、想定を超える風が吹く可能性は残ります。
気象庁の階級表で「どこから壊れるか」を見る
では実際、風速いくつから何が壊れるのか。気象庁が「風の強さと吹き方」という表を公表しています。建造物への影響だけを抜き出すと、次のようになります。
| 平均風速 | 予報用語 | 建造物のようす |
|---|---|---|
| 10〜15m/s未満 | やや強い風 | 樋(とい)が揺れ始める |
| 15〜20m/s未満 | 強い風 | 屋根瓦・屋根葺材がはがれるものがある。雨戸やシャッターが揺れる |
| 20〜25m/s未満 | 非常に強い風 | 屋根瓦・屋根葺材が飛散するものがある。固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する |
| 25〜30m/s未満 | 非常に強い風 | ビニールハウスのフィルムが広範囲に破れる |
| 30〜35m/s未満 | 猛烈な風 | 固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる。養生の不十分な仮設足場が崩落する |
| 35〜40m/s未満 | 猛烈な風 | 外装材が広範囲にわたって飛散し、下地材が露出するものがある |
| 40m/s以上 | 猛烈な風 | 住家で倒壊するものがある。鉄骨構造物で変形するものがある |
読み方で注意していただきたいのが、同じ表の注記です。
- 平均風速は10分間の平均、瞬間風速は3秒間の平均
- 瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多く、大気の状態が不安定な場合などは3倍以上になることがある
つまり、天気予報で「平均風速20m/s」と言われた日には、瞬間的には30m/s前後が吹くと考えておくのが現実的です。そして表を見ると、その帯はちょうど「屋根葺材が飛散する」領域に入ります。
太陽光パネルそのものが飛ぶ前に、周りの屋根材・カーポートのポリカ板・物置・アンテナのほうが先に飛ぶことが多い、というのが現場の実感とも一致します。飛来物がパネルに当たって割れる、というのが住宅で最も多い壊れ方です。
台風が来る前に、家庭でできること
ここからは実務です。前日から当日にかけて、順番に。
1. 屋根には上らない(これが最優先)
台風前の点検で屋根に上って転落する事故が、毎年繰り返し起きています。前日の風がすでに強い状況で屋根に上るのは、太陽光の被害よりはるかに危険です。
パネルの固定金具の緩みなどは、本来は平常時の定期点検で見るものです。台風の前日に慌てて確認するものではありません。点検の考え方は太陽光の維持費と点検の義務で詳しく書いています。
2. パネルを外す・シートをかける、はしない
「養生シートで覆えないか」と聞かれることがありますが、逆効果です。シートが風をはらんで、かえって架台に想定外の力をかけます。パネルは風を受け流す前提で取り付けてあるので、余計なものを足さないのが正解です。
3. 蓄電池を満充電にしておく
これはやる価値があります。多くの蓄電池には「台風・停電に備えるモード」に相当する設定があり、系統からの充電で満充電にしておくことができます。機種によって呼び名も操作も違うので、取扱説明書かメーカーのアプリで前日までに確認しておいてください。
V2Hをお使いなら、EVも同じ考え方です。車の残量は家1軒分の電気になります。
4. 発電量のデータを「台風前」の状態で控えておく
見落とされがちですが、後で効きます。モニターやアプリの発電量画面をスクリーンショットで残しておくと、通過後に「明らかに落ちた」ことを示す材料になります。保険や施工店とのやりとりで、前後比較ほど強い材料はありません。
5. 地上からできる範囲の片付け
パネルは飛ばなくても、飛んできたものがパネルを割ります。庭の物置・自転車・ゴミ箱・植木鉢・カーポートに立てかけた資材など、風で動くものを屋内に入れておく。これが実質的にいちばん効く対策です。
6. 浸水のおそれがある土地なら、パワコンの位置を確認する
東北で台風というと、風より水の被害のほうが大きくなることがあります。パワーコンディショナや蓄電池が地面近くにある場合、浸水すると設備の問題だけでは済みません。考え方は大雨で太陽光や蓄電池が水に浸かったらにまとめています。

▲ 当社施工事例:スレート屋根への太陽光設置
通過中:停電したときだけ、やることがある
台風の最中に外へ出る必要はありません。判断が必要になるのは停電したときだけです。
蓄電池がある場合は自動で切り替わる機種がほとんどですが、太陽光だけの家はパワコンの「自立運転」への切り替えが必要です。手順は機種ごとに違い、平常時に一度練習しておくのが確実です。全負荷型と特定負荷型で使える範囲も変わります(全負荷型と特定負荷型の違い)。
ただし、風の被害が疑われる状況では自立運転の扱いに注意が必要です。太陽光パネルは、光が当たっているかぎり発電します。パネルが割れていても、ケーブルが外れていても、日中は電圧が出ているのです。屋根の上で異音がする、外にケーブルが垂れているといった状況が見えているなら、自立運転を使うより、暗くなるのを待って施工店に連絡するほうが安全です。
停電時の動き方全般は冬の停電対策と地震で停電したときの手順に書いています。
通過後:この順番で進めます
風が収まったら、次の順で動きます。順番に意味があります。
手順1|地上から、目視だけする
まず外に出て、地面に立ったまま屋根を見上げます。双眼鏡やスマホのズームを使ってかまいません。見るのは次の点です。
- パネルの割れ・浮き・ずれ
- 屋根から下がっているケーブル
- 落ちているパネルの破片・金具
- 雨どい、棟板金、アンテナなど周辺のダメージ
屋根には上らない。これは台風前と同じです。
手順2|破損があったら、近づかない
パネルの破片が落ちている、ケーブルが垂れている、パワコンから異音や焦げた臭いがする——このいずれかがあれば、そこから離れてください。
経済産業省は、台風による太陽電池発電設備の電気事故について注意喚起を出しており、「損壊した再エネ発電設備を見かけた場合は決して近寄らず、最寄りの産業保安監督部や経済産業省または設置者までお知らせいただきますようお願いいたします」としています。これはご近所の設備を見かけた場合も同じです。
割れたパネルは、割れていても発電します。濡れていればなおさら危険です。ブルーシートをかけたい気持ちは分かりますが、それは有資格の施工店の仕事です。
手順3|ブレーカーの扱いを施工店に確認する
「とりあえず太陽光のブレーカーを切ればいい」と考えがちですが、機種と被害状況によって手順が違います。切る場所を間違えると、蓄電池の非常用電源まで使えなくなることもあります。自己判断で操作する前に、施工店に電話で状況を伝えて指示を受けてください。
手順4|記録を残す
保険の申請に効きます。地上から撮れる範囲で、引きの写真(家全体)と寄りの写真(壊れた箇所)を両方。日付が分かる形で残します。台風前に控えた発電量のスクリーンショットと並べれば、被害の前後関係が示せます。
保険が使えるかどうかの考え方は雪・落雷・強風で壊れたら火災保険は使えるのかに詳しく書きました。強風は多くの火災保険で「風災」として扱われますが、契約内容と免責金額次第です。
手順5|パワコンのエラー表示を控える
停止していたら、画面に出ているエラーコードをそのまま書き写すか写真に撮ってください。復電後に自動で復帰して表示が消えてしまうことがあり、後から「あのとき何が出ていたか」が分からなくなります。
手順6|発電量を数日追う
見た目に異常がなくても、発電量が落ちていることがあります。通過後3〜5日、晴れた日の発電量を前年同月・台風前と比べてください。明らかに下がっていれば、目視では見えない損傷の可能性があります。
「事故報告」が要る家と、要らない家
ここは意外と知られていません。太陽光の被害には、法律上の報告義務がかかる場合とかからない場合があります。分かれ目は出力です。
経済産業省の説明では、事故報告の対象となる太陽電池発電設備は小規模事業用電気工作物にあたるもの、すなわち低圧(直流750V以下、交流600V以下)で10kW以上50kW未満の設備とされています。
| 太陽光の出力 | 区分 | 電気事業法の事故報告 |
|---|---|---|
| 10kW未満 | 一般用電気工作物 | 対象外 |
| 10kW以上50kW未満 | 小規模事業用電気工作物 | 対象(覚知から24時間以内に速報、30日以内に詳報) |
報告先は、発電設備の設置場所を管轄する産業保安監督部です。東北6県と新潟県は東北産業保安監督部の管轄になります。
一般的な住宅は10kW未満が多く、その場合は報告義務の対象外です。ただし東北では、屋根が広い住宅や農家の作業場・倉庫に10kWを超える設備を載せている例が珍しくありません。ご自宅がどちらなのかは、契約書や事業計画認定の情報で出力を確認すれば分かります。10kWを境に扱いが変わる話は出力制御の記事でも触れています。
なお、報告義務がない住宅用でも、破損したまま放置していいわけではありません。感電や火災の危険は出力の大小と関係なく残ります。
東北で、特に気をつけたい2つのこと
1. 「台風本体」より「温帯低気圧に変わったあと」が強いことがある
東北に届くころには勢力が落ちている、というのは半分正しく、半分間違いです。台風が温帯低気圧に変わると風の強い範囲が広がることがあり、中心から離れた場所で強い風が吹くことがあります。日本海側では、山を越えて吹き下ろす南寄りの風が強まる地形的な条件もあります。
「勢力が落ちたからもう安心」ではなく、お住まいの地域に出ている強風注意報・暴風警報を見るのが実務的です。
2. 風より水のほうが被害が大きくなりうる
製品評価技術基盤機構(NITE)は、台風被害を地形別に整理しており、平地では太陽電池パネルの飛散などの強風被害、河川付近では河川氾濫によるパワーコンディショナの水没などの大雨被害が発生していると示しています。傾斜地では土砂崩れによる架台の破損も挙げられています。
東北の住宅地は、川沿いの低地や山あいの傾斜地に立地することが多い地域です。ご自宅がどの型のリスクを持っているかを、ハザードマップと合わせて見ておくほうが、風速の数字を追うより実用的だと思います。
台風のあとに来る「飛び込み」への向き合い方
災害のあとは、地域に見慣れない業者が回ることがあります。「屋根を見てあげます」「保険で無料で直せます」といった声かけです。
判断の基準はシンプルで、その場で契約しない。これに尽きます。屋根の上に上がらせた結果、なかったはずの傷ができていた、という相談も実際にあります。まずは設置した施工店に連絡する。連絡がつかない、もう廃業しているという場合でも、地元で施工している会社に見積りを取り直せば済む話です。
復旧工事の見積りを取ったものの、金額が妥当なのか判断できないという場合は、当社が運営する「ソラカルテ」の見積書AI診断で、手元の見積書をその場で確認できます。電話番号の登録は不要なので、業者に知られずに相場感だけ確かめたい、という使い方もできます。
よくあるご質問
Q1. 台風前に、太陽光のブレーカーを切っておいたほうがいいですか?
A. 一律にそうとは言えません。切ると停電時の自立運転がすぐ使えなくなる機種があり、蓄電池の運転にも影響します。平常時にメーカーの説明を確認しておくのが正解です。前日に迷って操作するより、事前に「うちの機種はどうするのか」を控えておいてください。
Q2. パネルが1枚割れただけでも、全部交換になりますか?
A. なりません。多くの場合は割れた枚数の交換で済みます。ただし同じ型番のパネルが廃番になっていると、そこで悩ましくなります。出力や電気的な仕様の合うものを選ぶ必要があり、システム全体の設計を確認したうえでの判断になります。設置から年数が経っているお宅ほど、早めに相談されたほうがよい理由がここにあります。
Q3. 屋根に上って自分で確認したいのですが、どうしてもだめですか?
A. おすすめしません。理由は転落だけではありません。割れたパネルの表面は、日が当たっていれば電圧が出ています。濡れた屋根の上で破損部に触れるのは、感電の危険があります。加えて、素人が屋根を歩くとパネルや屋根材を追加で傷めることがあり、それが原因なのか台風が原因なのか分からなくなって、保険の判断も難しくなります。地上からの目視と写真で十分です。
まとめ
- 台風前に家庭でできることは限られている。屋根に上らない・パネルを覆わないが大前提
- 屋根置きの太陽光は建築基準法の基準風速(Vо)をもとに風圧力の安全性を確かめている。Vоは令87条2項で30〜46m/sの範囲と定められ、仙台市は30m/s(市公式ページ)
- 気象庁の階級表では、平均風速20〜25m/sで屋根葺材が飛散、30〜35m/sで固定の不十分な金属屋根がめくれる。瞬間風速は平均の1.5倍程度、不安定時は3倍以上になる
- 前日にやると効くのは、蓄電池の満充電・発電量のスクショ・庭の飛散物の片付けの3つ
- 通過後は①地上から目視 ②破損があれば近づかない ③ブレーカーは施工店に確認 ④写真で記録 ⑤エラーコードを控える ⑥数日発電量を追うの順
- 10kW以上50kW未満の設備は電気事業法の事故報告の対象で、覚知から24時間以内に速報が必要。10kW未満の住宅用は対象外
- 東北は風より水(PCS水没・土砂)の被害型になりうる。ハザードマップと合わせて備える
台風は、来る前に慌てるより、通り過ぎたあとの30分の動き方で結果が変わります。この記事を、その30分の手順書としてお使いいただければ幸いです。
ご自宅の設備がどの型に当たるのか分からない、パワコンに見慣れない表示が出た、という段階でご連絡いただいてかまいません。当社では他社施工のお宅もご相談をお受けしています。
※本記事は2026年8月13日時点の情報です。制度・規格・製品仕様は変更されることがあります。
出典
- 経済産業省「【注意喚起】太陽電池発電設備における台風起因の電気事故への注意喚起」(令和7年8月20日)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2025/08/250820_00001.html
- 経済産業省「事故報告制度について」https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/jikohoukokuseido.html
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「太陽電池発電設備の台風被害、どう防ぐ?」(令和7年8月20日)https://www.nite.go.jp/gcet/tso/prs250820_00001.html
- 気象庁「風の強さと吹き方」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html
- 仙台市「構造計算で必要となる数値について」(基準風速V0=30m/s)https://www.city.sendai.jp/kenchikushido-kanri/jigyosha/taisaku/kenchiku/gyose/oshirase/kozo.html
- 建築基準法施行令 第87条(風圧力)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325CO0000000338
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監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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