太陽光に蓄電池を後付けするとき、FITの「変更手続き」を忘れていませんか|東北の住宅用でやること【2026年版】

「太陽光は10年前に載せました。今回そこに蓄電池を足したいのですが」
いま最も多いご相談のかたちです。電気代が上がり、卒FITが近づき、蓄電池の価格もこなれてきた——足したくなる理由はそろっています。
ただ、この工事には多くの方が知らない手続きがついてきます。国のFIT(固定価格買取制度)で認定を受けた事業計画の「変更手続き」です。工事だけ済ませて、この手続きが抜けたままになっているお宅は、正直に申し上げて少なくありません。
しかもここには、売電単価が見直される可能性という、お金に直結する論点が含まれています。「蓄電池を付けると売電価格が下がる」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。その話は半分正しく、半分は古い情報です。
この記事では、蓄電池の後付けで何の手続きが要るのか、単価が変わるのはどういう場合か、東北の住宅用ではどう考えればよいのかを、資源エネルギー庁の公式資料をもとに整理します。

▲ 当社施工事例:屋外に後付けした蓄電池
認定を受けているのは「機械」ではなく「事業計画」
まず前提の整理からです。
FITで認定されているのは、屋根の上のパネルという「物」ではありません。「この設備で、この構成で、こう発電して売電します」という事業計画が認定されています。だから、その構成が変われば、計画を直す必要があります。
資源エネルギー庁は、変更手続きを次の4種類に分けています。
- 変更認定申請(審査があり、認定通知書が出る)
- 事前変更届出(変更前に届け出る)
- 事後変更届出(変更後に届け出る)
- 卒FIT事前変更届出(買取期間が終わった設備向け)
どれに当たるかは変更内容ごとに決まっており、「変更内容ごとの変更手続の整理表」という一覧が公表されています。自己判断で選ぶものではなく、表を見て決めるものです。
電子申請と紙申請
50kW未満の太陽光は「再生可能エネルギー電子申請」で手続きします。設備IDでログインし、変更手続の種類を選んで、書類をPDFまたはZIPでアップロードする流れです。
10kW未満の変更認定申請は「様式第4」、審査期間は2〜3か月程度と公表されています。工事の直前に慌てて始めるものではない、ということです。
蓄電池は「自家発電設備等」に当たります
では、蓄電池の後付けは上の表のどこに入るのか。
答えは「自家発電設備等の設置の有無」という項目です。そしてこの項目は、変更認定申請に分類されています。届出で済むものではありません。
「自家発電設備等」に含まれるもの
公式の整理表には、この用語の中身が例示されています。
- エネファーム
- エコウィル
- 蓄電池
- 家庭用に電気を供給することができる電気自動車(V2Hを介した使い方が典型)
つまり、蓄電池だけでなく、V2Hを入れる場合も同じ枠で考えることになります。V2Hの導入を検討中の方は V2H補助金は最大130万円。でも「入れて損する家」もあります とあわせてご確認ください。
なお、エコキュート(給湯機)は発電する機器ではないため、この一覧には挙げられていません。オール電化への切り替えでエコキュートだけを増設する場合と、蓄電池を足す場合は、手続きの意味合いが違います。
添付する書類
10kW未満(住宅用)の場合、整理表で求められている添付書類は次のとおりです。
- 配線図(50kW未満の太陽光は、標準配線図と異なる場合のみ必要)
- 構造図(50kW未満の太陽光は、標準構造図と異なる場合のみ必要)
- 自家発電設備等の仕様書(50kW未満の太陽光は不要)
住宅用は「標準と違うときだけ」という書き方になっているので、実務では施工業者が判断する部分です。ご自身で全部そろえる必要はありませんが、業者に「変更認定申請までやってくれるのか」を必ず確認してください。
売電単価は下がるのか——「ダブル発電」は2019年度で終わっています
ここが本題です。
資源エネルギー庁は「調達価格/基準価格が変更される事業計画の変更整理表」という別の一覧も公表しており、そこで「自家発電設備等の設置の有無」は「変更あり」、つまり価格が変わりうる項目に分類されています。
そして注意書きに、こう書かれています。10kW未満の設備で自家発電設備等を新たに併設しダブル発電に変更する場合など、区分等を変更する場合は、その案件に適用されている調達価格が属する年度における、変更後の区分の価格に見直される、と。
では「ダブル発電の区分」はいまも存在するのか
ここが多くの説明で抜けている点です。過去の買取価格表を見ると、答えが出ます。
2018年度の住宅用(10kW未満)の価格表には、区分が2つ並んでいます。
| 2018年度・10kW未満 | 出力制御対応機器の設置義務なし | 設置義務あり |
|---|---|---|
| 通常 | 26円 | 28円 |
| ダブル発電 | 25円 | 27円 |
ところが2019年度の価格表を見ると、住宅用は「出力制御対応機器の設置義務なし 24円/設置義務あり 26円」の1区分だけになっています。ダブル発電の欄が消えているのです。
つまり、住宅用のダブル発電という価格区分は2019年度から設けられていません。
結論は「認定年度で変わる」
これを踏まえると、こうなります。
- 2018年度以前に認定を受けた設備:ダブル発電の区分が存在するため、蓄電池の併設で単価が見直される可能性があります。2018年度なら1円/kWhの差でした
- 2019年度以降に認定を受けた設備:移る先の「ダブル発電区分」がそもそも存在しません
ただし、整理表の注記には蓄電池をパワーコンディショナよりも太陽電池側に新設・増設する場合に限るといった細かい条件も書かれており、接続の仕方によって扱いが分かれます。ここは一律に言い切れる部分ではありません。
当社の実務としては、「あなたの設備の認定年度」と「蓄電池をどちら側につなぐか」の2点を先に確認したうえで、金額の話をします。この2つを聞かずに「単価は下がりません」と断言する説明があったら、根拠を尋ねてください。
東北の住宅用は、そもそも単価が2円高い
上の表で「出力制御対応機器の設置義務あり」という列が気になった方もいると思います。
これは全国一律ではありません。北海道・東北・北陸・中国・四国・九州・沖縄の各電力の供給区域で、出力制御対応機器の設置が義務づけられています。東北電力の供給区域は、この対象です。
機器の分だけ費用がかかるので、その分調達価格が上乗せされています。2019年度なら、義務なしの24円に対して東北は26円でした。
「東北は出力制御が厳しいのでは」という不安については、住宅用(10kW未満)の実際の扱いを 「東北は出力制御が厳しい」と言われたら|住宅用が当面対象外である理由 にまとめています。あわせてご覧ください。

▲ 当社施工事例:屋内設置のパワコンと蓄電池
手続きの実務で、つまずきやすいところ
整理表の留意事項から、住宅のお客様に関係する部分を拾っておきます。
変更認定申請と変更届出は、同時にできない
電子手続きでは、変更認定申請と変更届出を同時に行うことはできません。申請と届出は分けて行う必要があり、同じ事業計画について複数種類の変更手続きを同時に進めることもできません。蓄電池の追加と別の変更が重なる場合は、順番を組む必要があります。
運転開始後、最初の変更手続きでは受給開始日の書類が要る
運転開始をした後、最初に変更手続きをする際には、受給開始日を証する電力会社発行の書類(受給開始日が分かるもの)を添付し、運転開始日を入力することとされています。10年前に設置してから一度も手続きをしていない、というお宅はここに当たります。古い書類を探しておいてください。
代行してもらう場合の注意
施工業者などが代行して申請する場合、設備設置者からの委任状と印鑑証明書(申請日より3か月前から申請日までの間に発行された原本に限る)の添付が必要です。
そして整理表には、行政書士または行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反になる、との注意も明記されています。「うちが全部やっておきます」と言われたときに、それがどういう形の代行なのかは確認しておいて損はありません。
電力会社への提出も忘れずに
名義変更などで特定契約(売電契約)の変更が必要になる場合は、「変更認定通知書の写し」または「事前/事後変更届出の受理日が分かるもの」を電力会社へ提出する必要があります。国の手続きだけで完結しません。
卒FIT後に蓄電池を入れる場合
買取期間が終わっている設備は、扱いが変わります。整理表には卒FIT事前変更届出という区分が用意されており、この届出には原則として添付書類が不要とされています(代行事業者が申請する場合は、委任状と印鑑証明書が必要です)。
すでに売電単価が下がっている以上、蓄電池を入れる判断そのものも変わります。買う前に確認しておきたい数字は 卒FITで蓄電池を勧められたら|買う前に確認する3つの数字 に書いています。
手続きの前に、機種の設計を決めてください
手続きの話をしてきましたが、順番としては設備の設計が先です。後から変えると、手続きもやり直しになります。
最低限、次の2つは工事前に決めてください。
- 容量をいくつにするか——大きければ良いというものではありません。蓄電池は何kWhが正解?東北の冬から逆算する容量の選び方
- 全負荷か特定負荷か——東北の冬の停電では、この選択が体感を大きく分けます。全負荷型と特定負荷型、どっちを選ぶ?
よくあるご質問
Q1. 蓄電池を付けてから何年も手続きをしていません。いまからでもできますか。
A. 手続き自体は後からでも可能です。ただし運転開始後の最初の変更手続きでは、受給開始日を証する電力会社発行の書類の添付が求められます。まずはご自身の設備IDと認定年度を確認し、施工した業者か、50kW未満の認定申請の窓口であるJPEA代行申請センター(JP-AC)にご相談ください。
Q2. 蓄電池を付けると、必ず売電単価が下がるのですか。
A. 一律には下がりません。住宅用の「ダブル発電」という価格区分は2019年度から設けられていないため、2019年度以降に認定を受けた設備には、移る先の区分がありません。2018年度以前の認定は見直しの対象になりえます。さらに接続の仕方による条件もあるため、ご自身の認定年度と設計をもとにご確認ください。
Q3. 手続きにどのくらい時間がかかりますか。工事を先に進めても大丈夫ですか。
A. 10kW未満の変更認定申請は、申請から認定まで2〜3か月程度と公表されています。工事とのタイミングは設計段階で業者と相談してください。当社では、手続きの見通しを含めてスケジュールをお出ししています。
まとめ
- 太陽光に蓄電池を後付けすると、FIT事業計画の変更認定申請が必要(届出では済まない)
- 「自家発電設備等」には蓄電池・エネファーム・エコウィル・家庭用に電気を供給できる電気自動車が含まれる
- 売電単価は認定年度で結論が変わる。住宅用のダブル発電区分は2019年度から設けられていない
- 2018年度の東北(出力制御対応機器の設置義務あり)は、通常28円・ダブル発電27円という1円差だった
- 東北は出力制御対応機器の設置義務エリアなので、もともと調達価格が2円高い
- 10kW未満の変更認定申請は様式第4/審査2〜3か月。運転開始後の初回変更では受給開始日の書類が要る
- 代行は委任状+印鑑証明書(3か月以内の原本)。行政書士法の制限にも注意
- 特定契約(売電契約)の変更が要る場合は、変更認定通知書の写し等を電力会社へ提出
蓄電池の後付けは、機器を選ぶ話と手続きの話が同時に走ります。工事が終わってから「手続きが要ると聞いていない」となるのが一番よくないので、見積りの段階で、変更手続きを誰がどこまでやるのかを書面で確認してください。当社では設計・工事・手続きの見通しをまとめてご説明しています。
※本記事は2026年8月8日時点の情報です。制度の運用や様式は更新されますので、最新の内容は下記の公式サイトでご確認ください。
出典(すべて公式サイト)
- 資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出・廃止届|FIT・FIP制度」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_change_d.html
- 資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_seirihyou.pdf
- 資源エネルギー庁「調達価格/基準価格が変更される事業計画の変更整理表」(2026年4月1日更新)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_nintei_seirihyou.pdf
- 資源エネルギー庁「過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
- 東北電力ネットワーク「系統連系・発電量調整供給・電力売電に関するお申込み」https://nw.tohoku-epco.co.jp/consignment/request/emit/
当社が運営する「ソラカルテ」では、太陽光・蓄電池の見積書をその場で無料AI診断できます。電話番号の登録は不要です。
監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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