「太陽光を載せた屋根は、もう塗れない」——そんなことはありません|屋根塗装・葺き替えとパネル脱着の進め方【東北・2026年版】

先に結論
太陽光を載せた屋根も、塗装や葺き替えはできます。
決めるのは「外すかどうか」ではなく、外す人が誰かです。
メーカーの保証規定には、認定店以外の者が行った移設に起因する故障は保証しない、と書かれています。
東北は塗装できる気温の期間が短いので、秋の工事は夏のうちに段取りするのが現実的です。
「太陽光を載せているので、屋根はもう塗れないと言われました」——このお話は、正しくありません。
パネルを載せた屋根でも、塗装も、カバー工法も、葺き替えもできます。実際に、屋根工事に合わせてパネルを一度外し、工事のあとに戻す施工は珍しいものではありません。
ただし、載っていない家と同じようには進みません。外す・戻すという工程が増え、そこに保証と手続きがぶら下がるからです。順番を決めないまま屋根工事だけ先に契約すると、あとから「保証が効かない」「売電の手続きが要る」と分かって止まります。
この記事では、太陽光を載せた家で屋根の塗装や葺き替えを考えるときに、どの順番で何を決めるかを、国の資料とメーカーの公式な保証規定、気象庁の平年値で確認しながら整理します。

▲ 当社施工事例:パネルが載った面のスレート屋根
パネルの下の屋根材は、手が入れにくくなる
まず、国の資料がこの前提をはっきり書いています。
国土交通省住宅局の編集協力で、一般社団法人環境共生住宅推進協議会がまとめた『戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するQ&A』(令和5年3月)は、屋根材の耐久性についてこう説明しています。
屋根置き型の太陽電池アレイを設置した場合には、設置後にその下に隠れる屋根材のメンテナンスや交換が難しくなります。
屋根材のメンテナンスを行うことが必要な場合には、太陽電池モジュールを外すことが必要になり、費用と手間がかかるほか、場合によっては取外しによって太陽光発電システムに不具合が生じる可能性も考えられます。
同じ資料は、太陽光発電システムの機器保証が概ね15年程度、出力(発電)保証が概ね20〜25年程度とされていることを挙げ、それを超える耐久性の屋根材を選んでおくことが必要だとしています。
つまり国の側も、「パネルの下の屋根は触れない」とは言っていません。言っているのは、触るなら外すことになる、その手間とリスクを見込んでおきなさいということです。
ここを読み違えて「もう何もできない」と受け取ってしまうと、雨漏りが始まってから慌てることになります。屋根に載せる前の段階で屋根をどうするかは太陽光を載せる前に屋根はどうする?で扱いましたが、この記事はすでに載っている家の話です。
「10年後にもう一度足場を組む」を避ける
屋根の工事でまとまった金額になるのは、屋根材そのものより足場と手間です。
同じQ&Aは、パワーコンディショナの期待寿命を10年以上、太陽電池モジュールの期待寿命を20年以上としています。パワコンの交換時期と屋根の塗り替え時期は、多くの家で近い時期に来ます。
- 屋根の工事で足場を組むなら、そのときにパネルまわりの点検も一緒に済ませる
- パワコンの交換が近いなら、同じ年にまとめるかどうかを見積り段階で比べる
- 雪止めや雨どいの手直しも、足場があるうちに判断する
維持費と点検の全体像は太陽光は「つけてから」いくらかかる?で整理しています。
屋根に何をするかで、脱着が要るかは変わります
「太陽光があると屋根工事ができない」という話が広まるのは、工事の種類ごとの違いが説明されないまま、いちばん重い工事を基準に話されるからです。
屋根の工事は大きく3つに分かれます。
| 工事の種類 | 何をするか | パネルの扱い |
|---|---|---|
| 塗装 | 既存の屋根材の表面を塗り替える | パネルの下は塗れない。外さずに周囲だけ塗るか、外して全面を塗るかを選ぶ |
| カバー工法 | 既存の屋根材の上に新しい屋根材をかぶせる | 架台を留め直すため、原則としてパネルを外す |
| 葺き替え | 既存の屋根材を撤去して新しくする | パネルを外す。野地板・防水シートまで手を入れる |
塗装だけは「外さない」という選択肢がある、というのが実務上の分かれ目です。
パネルを外さずに塗る場合、パネルの下と架台まわりは塗れません。屋根の面のうちパネルが載っている部分は、前回の塗膜のまま次の10年を迎えることになります。「安く済んだが、次に外したときに下だけ傷んでいた」という結果になりやすいのはこの選び方です。
反対に、外して全面を塗れば屋根はそろいますが、脱着の費用と、外している間の発電停止が乗ります。どちらが得かは、屋根材の傷み方と、あと何年その家に住むかで変わります。ここは見積り時にご相談ください。
葺き替え・カバー工法は、防水のやり直しとセットになる
葺き替えとカバー工法では、架台を留めるビスの位置が変わります。もとの穴をどう処理するか、新しい穴にどんな防水措置をするかが、工事の品質そのものになります。
太陽光パネルの設置工事で雨漏りが起きるのは、多くがこの貫通部の処理です。責任の切り分けと集めるべき書類は太陽光を載せた家で、天井にシミが出た方へにまとめました。屋根工事とパネル脱着を別々の会社に頼むと、あとで雨漏りしたときにこの切り分けが難しくなります。

▲ 当社施工事例:屋根の2面を使った割付
東北は「塗れる気温」の期間が短い
ここからが東北固有の条件です。
塗料は、気温が低すぎても湿度が高すぎても、正しく乾きません。日本ペイントは公式のFAQで、外壁や屋根の塗装について「気温5℃以上、湿度85%未満の気象条件の下で塗装可能です」と説明しています。同社の製品塗装仕様書にも、気温5℃以下・湿度85%以上などの場合は原則として塗装を行わない、と明記されています。
では、東北で「気温5℃以上」はいつ確保できるのか。気象庁の平年値(1991〜2020年)で、日最高気温を見てみます。
| 月 | 仙台の日最高気温(平年値) | 盛岡の日最高気温(平年値) |
|---|---|---|
| 11月 | 14.1℃ | 10.9℃ |
| 12月 | 8.3℃ | 4.5℃ |
| 1月 | 5.6℃ | 2.0℃ |
| 2月 | 6.5℃ | 3.2℃ |
| 3月 | 10.0℃ | 7.5℃ |
| 4月 | 15.5℃ | 14.4℃ |
盛岡は12月・1月・2月の3か月、日最高気温の平年値が5℃を下回ります。日中のいちばん暖かい時間ですら、塗装の下限を平年で割っているということです。
仙台も1月5.6℃・2月6.5℃で、下限をわずかに超えている程度です。朝夕は5℃を大きく下回り、日最低気温の平年値は1月がマイナス1.3℃、2月がマイナス1.1℃。作業できる時間帯が数時間に縮むので、日程は伸びます。
ここに雪が加わります。積もれば屋根には上れません。落雪と雪止めの考え方は太陽光パネルからの落雪で扱いました。
結論として、東北の屋根塗装は4〜11月が現実的な窓です。梅雨と真夏を外すと、春と秋に寄ります。しかも脱着が入る工事は、屋根屋と電気工事の日程を合わせる必要があります。
秋に工事したいなら、逆算はこうなります
見積り・現地調査に2〜3週間。
保証とFITの確認に1〜2週間。
屋根屋と脱着の日程調整に2〜3週間。
合わせて1か月半から2か月。10月に足場を組みたいなら、8月中に動き出す計算です。
外して戻すときに、国の手続きが要る場合があります
見落とされやすいのがこれです。FITの認定を受けている設備は、内容を変えるときに国への手続きが必要になることがあります。
資源エネルギー庁の「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)は、「太陽電池に係る事項(製造事業者名/種類/変換効率/型式番号/枚数/合計出力)」の変更を、変更認定申請の対象として整理しています。しかもこの項目には●が付いています。同じ表の留意事項に、○は調達価格が変わらないもの、●は調達価格が変わる可能性があるもの、と書かれています。
読み替えると、こうなります。
- 外したパネルを、同じ型式・同じ枚数でそのまま戻す → 太陽電池に係る事項は変わらないので、この項目の変更にはあたらない
- 戻すときに1枚割れていて、別の型式に替える → 製造事業者名・型式番号が変わる
- 足場があるうちに数枚足す/減らす → 枚数と合計出力が変わる
後者の2つは、売電の単価が変わる可能性がある変更として扱われる領域に入ります。「ついでに増設しませんか」という提案は、金額だけでなくこの点も一緒に確認してください。
なお、パネルの型式を変更する場合は、JP-AC太陽光パネル登録リストに登載されているパネルを指定するように、とも同じ表に書かれています。
ご自身の設備がどれに当たるかは、認定の年度や設置形態でも変わります。判断は必ず、資源エネルギー庁の整理表と申請窓口で確認してください。この記事は一般的な整理です。
保証は「誰が外したか」で変わります
もうひとつ、工事の順番より先に確認すべきものがあります。メーカー保証の条件です。
たとえば長州産業の保証規定(K-02)は、保証しない事項として次を挙げています。
製造者、当社、施工認定店等のいずれにも属さない者が行った点検、修理、移設、改造に起因する故障等。
さらに、
当社の標準架台を用いたか否かにかかわらず、施工認定店等以外の者による設置工事又は当社の定める施工ルールに反して行われた設置工事に起因する故障等。(設置部からの雨漏りを含む)
も対象外としています。再設置は「設置工事」です。 屋根の塗装業者がその場の判断でパネルを外して戻した場合、そこから生じた不具合や雨漏りは保証の外に出る可能性がある、ということになります。
条件はメーカー・機種・契約時期によって違います。必ずお手元の保証書を読んでください。 それでも共通して言えるのは、外す人を誰にするかを、屋根工事の契約前に決める必要があるということです。
相談する順番
前掲のQ&A(国土交通省住宅局 編集協力)は、取り外しの相談先をこの順で挙げています。
- まずは購入した販売店、または取り付けを行った施工店に相談する
- 屋根の葺き替えや解体を行う場合は、それぞれの工事業者(屋根工事業者・解体工事業者)にも相談する
- 設置時の販売店や施工店が廃業して連絡がつかない場合は、太陽電池モジュールメーカーの相談窓口に相談する
- それでも見つからない場合は、太陽光発電協会(JPEA)が公開している取外しおよび適正処理が可能な施工業者一覧表から探す
順番に意味があります。設置した会社がいちばん、その屋根の納まりを知っているからです。連絡が取れるなら、まずそこへ。
外したパネルを廃棄する場合の扱いは太陽光パネルは寿命が来たらどうなる?にまとめています。
見積書で確認する5つのこと
屋根工事とパネル脱着が同じ見積書に載るとき、金額の総額だけを見ても比べられません。次の5点が書いてあるかを見てください。
- 脱着の費用が、取り外しと再設置に分かれて書いてあるか(「一式」だけだと、戻す工事が含まれているのか読めません)
- 足場を屋根工事と共用するのか(別立てなら、二重に払っていないかを確認します)
- 架台の穴の処理と防水措置が明記されているか(葺き替え・カバー工法では、ここが雨漏りの分かれ目です)
- 誰がパネルを外すのか(施工認定店か、屋根業者か。保証の条件に直結します)
- 外している間の発電停止と、破損したときの責任(どちらの会社が負うのかを書面で)
この5点が書かれていない見積書は、安く見えても比較の土俵に乗りません。
当社が運営する「ソラカルテ」では、お手元の見積書をアップロードすると、内訳の書き方や不足している項目をその場でAIが診断します。電話番号の登録は不要ですので、契約前のセカンドオピニオンとしてお使いください。
よくある質問(FAQ)
Q1. パネルを外さずに屋根を塗ってもらうことはできますか。
A. できます。ただしパネルの下と架台まわりは塗れません。次に塗り替えるのは10年前後あとになりますので、その間その部分は前回の塗膜のままになります。屋根材の傷み方を見て、外すかどうかを決めてください。カバー工法と葺き替えは、架台を留め直すため原則として脱着が必要です。
Q2. 脱着の費用はどのくらいかかりますか。
A. 屋根の形・パネルの枚数・架台の種類・足場の共用の有無で大きく変わるため、公的に確認できる目安の金額はありません。この記事では書きません。見積りの際に、取り外しと再設置を分けた内訳でお出しします。
Q3. 外している間、売電は止まりますか。
A. パネルを外している期間は発電しませんので、その分の売電もありません。日数は工事の内容で変わります。発電が落ちたように見えるとき、原因が工事なのか設備側なのかの切り分けは「太陽光が止まっている」と思ったらを参考にしてください。
まとめ
- 太陽光を載せた屋根も、塗装・カバー工法・葺き替えのいずれもできます
- 国の資料(国交省住宅局 編集協力のQ&A)も、パネルの下の屋根材はメンテナンスが難しくなり、必要なら外すことになると説明しています
- 塗装だけは「外さない」選択肢があります。ただしパネルの下は塗れません
- 東北は塗装できる気温の期間が短く、盛岡は12〜2月の日最高気温の平年値が5℃未満。現実的な工事の窓は4〜11月です
- 外す人が誰かで保証の扱いが変わります。 長州産業の保証規定は、認定店等以外の者が行った移設に起因する故障を対象外としています
- 戻すときに型式や枚数が変わると、FITの変更認定申請の対象になり、調達価格が変わる可能性があります
- 見積書は、脱着の内訳・足場の共用・防水措置・外す人・破損時の責任の5点で比べてください
屋根を触るかどうかで迷っている段階でも構いません。屋根の写真と、パネルを載せた年、保証書の3つがあれば、外すべきかどうかの目安はお伝えできます。
出典・確認先(2026年8月23日確認)
- 一般社団法人環境共生住宅推進協議会(編集協力:国土交通省住宅局)『戸建住宅の太陽光発電システム設置に関するQ&A』令和5年3月 https://www.kkj.or.jp/contents/build_hojyojigyo/report/R04_PVset_qa.pdf
- 資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_seirihyou.pdf
- 資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出等|FIT・FIP制度」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_point.html
- 日本ペイント株式会社「冬場の寒いときや、夏場の暑いときに外壁や屋根を塗装しても問題ないですか?」 https://www.nipponpaint.co.jp/support/faq/8/
- 気象庁「仙台 平年値(年・月ごとの値)」1991〜2020年 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=34&block_no=47590
- 気象庁「盛岡 平年値(年・月ごとの値)」1991〜2020年 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=33&block_no=47584
- 長州産業株式会社「保証規定(K-02)」 https://cic-solar.jp/wp-content/uploads/hosyokitei_K-02.pdf
- 一般社団法人太陽光発電協会「使用済住宅用太陽電池モジュールの取外しおよび適正処理」 https://www.jpea.gr.jp/house/waste/
※本記事は2026年8月23日時点の情報です。保証の条件はメーカー・機種・契約時期によって異なりますので、必ずお手元の保証書をご確認ください。FITの手続きの要否は、認定の年度・設備の内容・変更の中身によって判断が変わります。個別の判断は資源エネルギー庁の整理表と申請窓口でご確認ください。
当社が運営する「ソラカルテ」では、太陽光・蓄電池の見積書をその場で無料AI診断できます。電話番号の登録は不要です。
監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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