太陽光がついた家を相続した・買ったときの手続き|「相続は届出」「売買は認定申請」で別物です【2026年版】

「実家を相続したのですが、屋根に太陽光が載っていまして」
このご相談が、ここ数年で明らかに増えました。2012年前後に設置されたお宅が世代交代の時期に入っていること、そして東北では遠方に住むご家族が実家を引き継ぐケースが多いことが背景にあります。中古住宅を買ったら太陽光がついていた、という方も同じです。
このとき必要になるのが、国のFIT(固定価格買取制度)の事業者名義の変更です。そして最初にお伝えしたいのは、次の1点です。
相続で引き継いだ場合と、売買や贈与で引き継いだ場合とでは、手続きの種類がまったく違います。
同じ「名義変更」という言葉で語られますが、片方は届出、片方は審査つきの認定申請です。必要書類も、かかる時間も違います。
さらに、多くの方がつまずく落とし穴がもう一つあります。太陽光パネルは、制度上「建物附属設備」として扱われていないという点です。これを知らないと、遺産分割協議書や売買契約書を作り直すことになります。
この記事では、資源エネルギー庁の公式資料をもとに、どちらのケースで何をすればよいのかを整理します。

▲ 当社施工事例:屋根に太陽光を載せた住宅
引き継いでいるのは「屋根の上の機械」ではなく「発電事業」
まず考え方から。
FITで認定を受けているのは、パネルという物ではなく、「誰が、どの設備で、どう発電して売電するか」という事業計画です。したがって家の所有者が変われば、発電事業者が変わったことになり、事業計画を直す必要が出てきます。
これを放置するとどうなるか。売電収入の振込先が、前の所有者(あるいは亡くなった方)の名義のままになります。毎月の金額としては大きくなくても、10年・20年の買取期間で見ると無視できませんし、口座が凍結されていれば入金自体が止まります。
「気づいたら3年経っていた」というご相談も珍しくありません。まず、ご自宅の設備ID(FITの認定番号)がどこにあるかを探すところから始めてください。
相続と売買では、手続きの種類が違います
資源エネルギー庁が公表している「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)では、事業者の変更が次のように分類されています。
| 引き継ぎ方 | 必要な手続き | 性格 |
|---|---|---|
| 相続による場合 | 事後変更届出 | 変更後に届け出る |
| 事業譲渡等(生前贈与等を含む) | 変更認定申請 | 審査があり、認定通知書が出る |
| 離婚による分与 | 事後変更届出 | 変更後に届け出る |
中古住宅の売買で太陽光を引き継ぐ場合は「事業譲渡等」に当たり、変更認定申請になります。10kW未満の変更認定申請は様式第4を使い、審査期間は2〜3か月程度と公表されています。
一方、相続は事後変更届出です。届出なので審査を待つ性格のものではありませんが、書類の重さは相続のほうが上です。理由は次章のとおりです。
なお手続きは「再生可能エネルギー電子申請」で行い、設備IDでログインして変更手続の種類を選ぶ流れになります。
最大の落とし穴——太陽光パネルは「建物附属設備」ではない
ここが、この記事で一番お伝えしたい点です。
公式の整理表には、事業者変更の欄にこう注記されています。太陽光パネルは建物附属設備として認められているものではないため、
- 事業譲渡の際は、建物とは別に明示することが必要
- 相続の際は、相続対象に発電設備が含まれていることが確認できることが必要
つまり、「家を相続した」「家を買った」だけでは、太陽光発電設備まで一緒についてきたことにならないのです。
具体的に何が起きるか
- 遺産分割協議書に「土地建物」としか書いていない場合、発電設備が相続対象に含まれていることを示せません
- 売買契約書に「太陽光発電設備」の記載がない場合、譲渡されたことを示せません
いずれも、書類を作り直すか、補う書類を用意することになります。相続の場合、相続人が遠方に散らばっていると、印鑑をもう一周もらうだけで数か月かかることがあります。
補うための様式も用意されています
資源エネルギー庁は、こうした場合のために参考様式を公開しています。
- 相続証明書——相続に伴う事業者変更を行う場合で、遺産分割協議書に具体的な相続資産が明記されていないときに添付が必要
- 事業譲渡証明書——発電事業を他者に譲渡する場合で、家族間での譲渡など、契約書を締結しないときに添付が必要
家族間で「もう名義はお前にしておくよ」と口頭で済ませたケースは、この事業譲渡証明書が受け皿になります。ただし生前贈与は「事業譲渡等」=変更認定申請なので、相続を待つ場合とは手続きが変わる点にご注意ください。
中古住宅を検討中の方は、契約前に不動産会社へ「契約書に太陽光発電設備を明記してほしい」と伝えてください。後から直すより、はるかに簡単です。
必要書類——相続の場合と、売買・贈与の場合
相続の場合
整理表に挙げられている添付書類は次のとおりです(個別の案件で異なる書類が必要になる場合があります)。
- 被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本(附票を含む。附票がない場合は住民票の除票でも可)
- 法定相続人全員の除籍謄本(※法務局が発行した法定相続情報でも代用可)
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書、または相続人全員の同意書
- 土地の取得を証する書類
有効期限に注意
公的機関が発行する書類は、被相続人の戸除籍謄本を除き、申請(届出)日より3か月前から当該申請(届出)日までの間に発行されたものに限られます。早く取りすぎると失効します。
もう一つ、実務で引っかかるのが登記関係です。登記事項要約書は認められません。また、一般財団法人民事法務協会がWEB上で行っている登記情報提供サービスからのデータの写しも、法的証明力が付与されないことから認められないと明記されています。登記事項証明書(全部事項証明書)を取得してください。
売買・贈与の場合
事業譲渡等(生前贈与等を含む)の場合は次のとおりです。
- 譲渡契約書、または譲渡証明書
- 個人の場合、双方の住民票記載事項証明書、または戸籍謄(抄)本のいずれか
- 契約当事者双方の印鑑証明書
- 土地の取得を証する書類(土地登記簿謄本、不動産売買/賃貸借契約書等)
- 事業実施体制図
- 関係法令手続状況報告書
なお、譲渡契約書に事業の譲渡に停止条件が付されている場合は、その成就が確認できる資料も必要とされています。

▲ 当社施工事例:外壁のパワーコンディショナ
電力会社の手続きは、国の手続きの「後」です
順番を間違える方が多いところです。
整理表の留意事項には、名義変更など、変更手続に伴い特定契約(売電契約)の変更が必要になる場合は、「変更認定通知書の写し」または「事前/事後変更届出の受理日が分かるもの」が必要になるため、電力会社へ提出してくださいと書かれています。
つまり流れはこうです。
- 国(再生可能エネルギー電子申請)で変更認定申請または事後変更届出を行う
- 変更認定通知書、または受理日が分かる書類を受け取る
- その写しを添えて、電力会社に売電契約の名義変更を申し込む
先に電力会社へ連絡しても、2の書類がないと進みません。東北電力エリアの売電に関する申込み窓口は、東北電力ネットワークのサイトに案内があります。
なお、ご家庭で電気を「買う」ほうの契約(電気料金の契約)は、これとは別の手続きです。相続やご逝去に伴う名義変更は電力会社のコールセンター扱いになりますので、こちらも忘れずに。
中古住宅を買うとき、契約前に確認したい5つ
太陽光つきの中古住宅は、うまく引き継げば大きな資産です。契約前に次の5点を確認してください。
- 設備ID(FIT認定番号)——これが分からないと手続きが始まりません
- 認定年度と調達価格——2012〜2014年頃の認定なら高い単価が残っています
- 残りの調達期間——住宅用は10年間。あと何年かで価値が変わります
- パネル・パワコンの保証が引き継げるか——メーカー保証は所有者が変わると引き継げない場合があります。「10年保証」と寿命は別物 もご参照ください
- これまでの点検・メンテナンスの記録——維持費の考え方は 太陽光は「つけてから」いくらかかる? にまとめています
屋根の太陽光が「他人の持ち物」のこともあります
見落とされがちですが、PPAやリースで設置された設備は、屋根に載っていても所有者が第三者です。この場合は相続や売買の対象にならず、事業者との契約を引き継ぐ話になります。仕組みは 「初期費用0円ソーラー」は東北で得か?PPA・リース・購入の違い をご覧ください。
売主に「この設備はご自身の所有ですか、それともPPA・リースですか」と確認してください。
東北で特に問題になりやすいこと
最後に、地域の事情を申し添えます。
遠方相続が多いことです。仙台や東京にお住まいの方が、実家の設備を引き継ぐ。書類のやりとりは郵送、現地確認は年に数回——という状況で、手続きが止まりやすくなります。
そして冬を挟むと現地確認が難しくなります。雪が積もれば屋根には上がれません。相続の発生が秋なら、年内に現地を見ておくことをお勧めします。
もう一つ、引き継いだものの誰も住まないというケース。設備を止めるか、売電を続けるかの判断が必要になります。撤去する場合の費用と流れは 太陽光パネルは寿命が来たらどうなる?廃棄・処分の費用 に整理しています。
よくあるご質問
Q1. 相続してから何年も名義変更をしていません。罰則はありますか。
A. 罰則の有無について当社が申し上げられる立場にはありませんが、実務上の不利益は明確です。売電収入の振込先が前の名義のままになり、口座が凍結されていれば入金が止まります。また設備の変更や撤去、売却をしようとしたときに、名義が違うことで手続きが進みません。お気づきの時点で着手されることをお勧めします。
Q2. 相続と売買で、どちらが手続きは軽いですか。
A. 手続きの種類としては、相続が事後変更届出、売買・贈与が変更認定申請です。認定申請は審査があり、10kW未満で2〜3か月程度かかります。一方で書類の点数は相続のほうが多く、法定相続人全員の印鑑証明書などが必要になります。どちらが楽かはご事情によります。
Q3. 手続きを業者に代行してもらえますか。
A. 代行事業者が申請する場合は、設備設置者からの委任状と印鑑証明書(申請日より3か月前から申請日までの間に発行された原本に限る)の添付が必要です。なお公式資料には、行政書士または行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反になる、との注意も明記されています。どこまでを誰がやるのかは、事前にご確認ください。
まとめ
- 引き継ぐのはパネルではなく発電事業。名義が前のままだと売電収入の振込先も前のまま
- 相続=事後変更届出/売買・生前贈与=変更認定申請。同じ「名義変更」でも別物
- ★太陽光パネルは建物附属設備ではない。遺産分割協議書・売買契約書に発電設備を別に明記する必要がある
- 明記がない場合の受け皿として、相続証明書・事業譲渡証明書の様式が公開されている
- 公的書類は申請日より3か月前〜申請日に発行されたものに限る(被相続人の戸除籍謄本を除く)
- 登記事項要約書・登記情報提供サービスの写しは不可。登記事項証明書(全部事項証明書)を取る
- 電力会社の名義変更は、国の通知書・受理日が分かる書類を受け取ってから
- 中古住宅は契約前に設備ID・認定年度・残期間・保証・PPAリースかどうかを確認
太陽光つきの家を引き継ぐことは、負担ではなく資産の承継です。ただし手続きの順番と書類の作り方を外すと、時間だけがかかります。相続が発生した時点、あるいは購入を検討し始めた時点でご相談いただければ、書類の段取りからお手伝いできます。
※本記事は2026年8月8日時点の情報です。制度の運用や様式は更新されますので、最新の内容は下記の公式サイトでご確認ください。個別の相続・税務のご相談は、司法書士・税理士等の専門家にご確認ください。
出典(すべて公式サイト)
- 資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_seirihyou.pdf
- 資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出・廃止届|FIT・FIP制度」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_change_d.html
- 資源エネルギー庁「過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
- 東北電力ネットワーク「系統連系・発電量調整供給・電力売電に関するお申込み」https://nw.tohoku-epco.co.jp/consignment/request/emit/
- 東北電力「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」https://www.tohoku-epco.co.jp/dprivate/attempt/renew/
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監修:株式会社ファナス|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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