太陽光が載った家を売ることになった方へ|売主がそろえる書類と、FITの事業者変更を引き渡し前に済ませる理由【東北・2026年版】

太陽光が載った家を、売ることになった方へ。
転勤、住み替え、実家の整理。理由はさまざまですが、共通してつまずくところがあります。屋根の上の太陽光は、家と一緒に自動では移らないという点です。
家の名義は法務局で移ります。ところが太陽光には、それとは別に国の手続きと電力会社の手続きがあり、しかも順番が決まっています。ここを引き渡しのあとに気づくと、買主が売電できない期間が生まれます。
この記事は、売主の側に立って書きます。何をそろえておけばいいのか、なぜ引き渡し前なのかを、公式の資料で確認しながら整理します。
先に結論
FIT認定を受けた設備の売買は「事業譲渡」にあたり、国への変更認定申請が必要です。
申請するのは買主ですが、印鑑証明書など売主にしか用意できない書類が複数あります。
公的機関が発行する書類は「申請日より3ヶ月前から申請日まで」に発行されたものに限られます。
電力会社の名義変更は国の手続きのあとなので、引き渡し前に動き出さないと売電が止まります。
なお、相続で引き継いだ場合や、買う側から見た手続きについては相続・名義変更の記事で扱っています。相続と売買は必要な手続きが別物なので、あわせてご覧ください。
売っているのは家ですが、屋根の上は「発電事業」です
まず前提の確認からです。
FIT(固定価格買取制度)の認定を受けた太陽光発電設備は、法律の上では「再生可能エネルギー発電事業」として登録されています。認定を受けているのは屋根や建物ではなく、事業計画です。
ですから家を売るとき、屋根の上について起きているのは「設備が付いてきた」ではなく、事業の譲渡です。資源エネルギー庁の「変更内容ごとの変更手続の整理表」でも、この場面は「事業譲渡等の場合(生前贈与等も含む)」という項目で扱われています。

▲ 当社施工事例:寄棟屋根に載せた太陽光パネル
そして、この項目に必要な手続きは変更認定申請です。届出ではありません。認定を受け直す扱いなので、審査があり、時間がかかります。
もう一点、重要なことが同じ整理表に書かれています。
譲受人が変更を申請・届出する必要があります。
申請するのは買主のほうです。売主が自分で出す書類ではありません。だからといって売主が何もしなくていいわけではなく、むしろここが今回の本題です。買主は、売主から書類をもらわないと申請できません。
売主にしか用意できない書類があります
整理表が「事業譲渡等の場合」の添付書類として挙げているのは、次のものです(個人どうしの売買の場合)。
| 書類 | だれが用意するか |
|---|---|
| ①譲渡契約書 又は 譲渡証明書 | 売主・買主の双方 |
| ②双方の住民票の写し、住民票記載事項証明書 又は戸籍謄(抄)本のいずれか | 売主・買主それぞれ |
| ③契約当事者双方の印鑑証明書 | 売主・買主それぞれ |
| ④土地の取得を証する書類等(土地登記簿謄本、不動産売買/賃貸借契約書等) | 買主 |
| ⑥事業実施体制図 | 買主 |
| ⑦関係法令手続状況報告書 | 買主 |
※⑤は破産による譲渡の場合のみ必要とされる書類です。個別の案件で必要書類が異なる場合があります。
表のうち、②と③は売主本人が役所で取る書類です。買主が代わりに取ることはできません。ここが「引き渡しが終わってから連絡が来て困る」いちばんの原因です。
引き渡しが済み、売主が遠方へ引っ越したあとに「印鑑証明をもう一通ください」と言われる。この形が実際によく起こります。引っ越し後だと、取りに行く役所も変わります。
もうひとつ、整理表には条件付きの注意書きがあります。
譲渡契約書において事業の譲渡に停止条件が設けられている場合は、その成就が確認できる資料の提出も必要。
不動産の売買契約には、ローン特約のように条件が付くことがあります。その条件が満たされたことを示す資料まで必要になる場合がある、ということです。契約書の作り方が手続きに直結します。
「3ヶ月」という区切りがあります
売主にとっていちばん実務的に効くのが、この規定です。整理表の留意事項に、こう書かれています。
公的機関の発行する書類については、被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本を除き、申請(届出)日より3カ月前から当該申請(届出)日までの間に発行された書類に限ります。
印鑑証明書も住民票も、発行から3ヶ月を過ぎたものは使えません。
これが「引き渡し前に済ませる理由」の核心です。売買の話が出た早い段階で印鑑証明を取っておくと、申請までに3ヶ月を超えてしまい、もう一度取り直しになります。逆に遅すぎると、引き渡し後に売主を追いかけることになります。
現実的な進め方は、引き渡し日が確定してから逆算して取ることです。契約から引き渡しまでが読める段階になったら、不動産会社と買主に「印鑑証明はいつの発行日で必要ですか」と確認しておくと、取り直しが防げます。
もうひとつ、登記簿謄本についても指定があります。
登記簿謄本については、法的証明が備わっている履歴事項全部証明書が必要なため、登記事項要約書又は(中略)登記情報提供サービスからのデータの写しは、法的証明力が担保されないことから認められません。
オンラインで取れる「登記情報提供サービス」の写しは使えません。安価で早いほうを取ってしまいがちなところなので、買主にも共有しておくと親切です。
契約書に「パネルを別に書く」必要があります
ここは、不動産の売買契約そのものに関わる部分です。整理表に、はっきりとこう書かれています。
太陽光パネルは、建物附属設備として認められているものではないため、事業譲渡の際は、建物と別に明示することが必要
「建物一式」では足りないということです。建物を売る契約を結んだだけでは、太陽光発電設備が譲渡されたことの証明になりません。
同じ趣旨のことは、相続の欄にも書かれています。相続の場合も「建物と別に明示したり、太陽光パネルを含む全てを相続対象とした記載とするなど、相続対象に発電設備が含まれていることを(確認できるようにする)」という注意書きが付いています。
売主としてできるのは、契約書を作る段階で、仲介する不動産会社にこの点を伝えておくことです。契約書を作り直すのは引き渡し後では困難なので、契約前がタイミングになります。
なお、重要事項説明は法律で定められた事項を宅地建物取引士が説明する制度で、対象の不動産についてあらかじめ知っておくべき最小限の事項が列記されたものです。太陽光発電設備をどこまで説明するかは個別の取引によって変わりますので、「太陽光の扱いはどう記載されますか」と自分から確認することをおすすめします。
電力会社の手続きは、国のあとです
国の変更認定が済んだら、次は売電の契約です。順番が逆にはできません。
東北電力ネットワークは、FIT認定発電設備の契約名義の変更について、所定の申込書とあわせて「変更認定通知書の写し」等を提出する必要がある、と案内しています。低圧の場合の書式は「名義変更申込書」です。
資源エネルギー庁側の整理表にも、対になる記載があります。
名義変更など、変更手続に伴い特定契約の変更が必要になる場合は、「変更認定通知書の写し」または「事前/事後変更届出の受理日が分かるもの」が必要となるため、電力会社へ提出してください。
国と電力会社の両方が、同じことを別の側から書いています。国の認定通知が出るまで、電力会社の名義変更は始められません。
東北エリアの低圧FIT契約の提出先は、宮城県仙台市宮城野区榴岡にある東北電力ネットワーク株式会社 ネットワークサービスセンターです。東北6県と新潟県のどこの物件でも、窓口は仙台になります。
売電収入の入金先は売主の口座のままですから、名義変更が遅れると、買主の家で発電した電気の売電収入が、売主の口座に入り続けるという状態になります。あとから精算する話になりますので、双方にとって早いほうが楽です。
売電にかかる税金の考え方は売電収入と確定申告の記事にまとめてあります。売却した年は、収入があった期間の扱いを確認しておいてください。
買主から「この設備は今だといくらぐらいのものですか」と聞かれることがあります。当社が運営する「ソラカルテ」では、太陽光・蓄電池の費用の目安を概算で確認できますので、話をするときの材料としてお使いいただけます。
10kWを超えている家は、もうひとつ届出があります
住宅の屋根でも、合計出力が10kW以上になっている場合があります。この場合、FITとは別に電気事業法の手続きが加わります。
10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は「小規模事業用電気工作物」にあたり、基礎情報の届出が必要な区分です。設置者が変わるということは、届け出た基礎情報のうち氏名・住所が変わるということなので、変更の届出が必要になります。
詳しくは10kW超の届出をまとめた記事をご覧ください。東北の提出先も同じ記事に書いています。
自分の設備が10kW以上かどうかは、FITの認定通知書か、パワーコンディショナの台数と容量で分かります。売却の話が出たら、まずここを確認してください。10kW未満なら、この節は関係ありません。
卒FITの家、リース・PPAの家は扱いが違います
「うちはもう買取期間が終わっている」という方もいらっしゃると思います。
その場合も手続きは残ります。整理表には「卒FIT事前変更届出」という欄が独立して設けられており、事業譲渡等の場合はこの欄にも印が付いています。ただし、こちらは添付書類が不要とされています(代行事業者が申請する場合を除く)。
FIT期間中に比べれば、ずいぶん軽い手続きです。それでも「何もしなくていい」ではないので、卒FITだからと放置しないでください。
もうひとつ、その設備が本当に自分のものかという確認も要ります。初期費用0円で設置した場合、契約期間中は設備の所有者が事業者のままになっていることがあります。この場合、売主が勝手に譲渡することはできません。
該当しそうな方は0円ソーラー・PPA・リースの記事で契約形態を確認したうえで、契約している事業者に、家を売る場合の扱いを先に聞いてください。
売る前に確認する5つ
売却が決まったら、この順に確認していくのが実務的です。
- FITの認定を受けているか、卒FITか。認定通知書か、経済産業省の再生可能エネルギー電子申請システムで確認できます
- 設備の所有者は自分か。リース・PPAなら事業者に確認する
- 合計出力が10kW以上か。10kW以上なら電気事業法の届出も必要
- 契約書に太陽光発電設備が建物と別に書かれるか。契約前に不動産会社へ伝える
- 印鑑証明書・住民票をいつ取るか。引き渡し日から逆算する(3ヶ月以内)
このうち4と5は、契約前・引き渡し前でないと間に合いません。残りは後からでも確認できます。
よくあるご質問
Q1. 手続きをしないまま引き渡してしまいました。どうなりますか。
A. 認定上の事業者が売主のままになり、売電収入も売主の口座に入り続けます。設備は買主のものなのに、国への届出上の責任者は売主、という状態です。気づいた時点で、買主と一緒に変更認定申請を進めてください。必要な書類は上の表と同じで、売主の印鑑証明書と住民票が改めて必要になります。引っ越し後だと手間が増えますので、早く動くほど楽です。
Q2. 買主が太陽光を要らないと言っています。撤去してから売るべきですか。
A. 撤去には費用がかかり、屋根の補修も伴います。判断の前に、撤去の見積もりと、設備を残した場合の売電収入を並べてみてください。残す場合は、この記事の手続きが必要です。撤去する場合は、パネルの処分方法と屋根の復旧について施工店にご確認ください。どちらが有利かは、残りの買取期間と屋根の状態で変わります。
Q3. 変更認定申請には、どのくらい時間がかかりますか。
A. 期間について、当社が公式資料で確認できた明示的な標準処理期間はありません。ただし届出ではなく認定の申請で審査を伴うこと、そしてそのあとに電力会社の手続きが控えていることは確かです。引き渡し日ぎりぎりに動き出す前提では組まないほうが安全です。具体的な見込みは、仲介する不動産会社と、申請を代行する場合はその代行事業者にご確認ください。
まとめ
太陽光が載った家を売るときに、売主が押さえておくことを整理します。
- 売買は「事業譲渡」にあたり、国への変更認定申請が必要。届出ではなく認定なので審査がある
- 申請するのは買主(譲受人)。ただし売主の印鑑証明書・住民票がないと申請できない
- 公的機関の発行書類は、申請日から3ヶ月前までのものに限られる。早すぎても遅すぎても取り直しになる
- 登記簿謄本は履歴事項全部証明書が必要。登記情報提供サービスの写しは認められない
- 太陽光パネルは建物附属設備ではないので、契約書に建物と別に明示する必要がある。これは契約前でないと直せない
- 電力会社の名義変更は、国の変更認定通知が出たあと。東北エリアの低圧の窓口は仙台
- 10kW以上なら電気事業法の届出も、卒FITなら卒FIT事前変更届出も残る
家の売買は、引き渡し日が先に決まって動いていきます。太陽光の手続きは、その日程に自分から差し込まないと後回しになります。契約の話が出た段階で、この記事の5項目を不動産会社と共有しておいてください。
当社は宮城・福島・山形・岩手・秋田・青森・新潟で施工しています。売却にともなう設備の状態確認や、買主の方からのご相談もお受けしています。手続きそのものは不動産会社と申請の窓口が主役ですが、設備の中身について分からないことがあれば、お気軽にお声がけください。
※本記事は2026年8月28日時点の情報です。手続きの区分・添付書類は制度改正で変更されることがありますので、申請の前に必ず資源エネルギー庁の最新の整理表と、電力会社の案内をご確認ください。個別の売買契約の内容については、仲介する不動産会社と専門家にご相談ください。
出典
- 資源エネルギー庁「<変更内容ごとの変更手続の整理表>」(2026年4月1日更新) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_seirihyou.pdf
- 資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出・廃止届|FIT・FIP制度」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_change_other.html
- 東北電力ネットワーク「系統連系・発電量調整供給・電力売電に関するお申込み」 https://nw.tohoku-epco.co.jp/consignment/request/emit/
- 国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001477450.pdf
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監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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