先に結論を書きます。10年目の太陽光の点検は「見る」より「測る」です|絶縁抵抗・開放電圧・地絡の3つの測定で何が分かるか、東北の施工店に頼むときの言い方【2026年版】

先に結論
太陽光の定期点検は、目で見るだけでは終わりません。絶縁抵抗・開放電圧・地絡(接地)の測定が入って、はじめて点検です。
国の事故調査には、目視では異常なし、測定で絶縁不良が分かった事例が載っています。
基準値に収まっていても「前回より大きく下がったら原因を調べる」のがガイドラインのルールです。だから1年目の数字が要ります。
東北では、地絡が「雨の日だけ」「雪解けの時期だけ」出ることがあります。測る日の天気まで記録するのが正しい点検です。
先に結論を書きます。10年目の太陽光の点検は「見る」より「測る」です。
屋根に上ってパネルを眺め、パワーコンディショナの表示を確かめて「異常なし」。これだけの点検は、点検の半分しかしていません。JEMA・JPEAの保守点検ガイドラインが定期点検の項目に挙げているのは、目視に加えて絶縁抵抗の測定・開放電圧の測定・接地抵抗の測定です。そして国の事故調査には、目で見て異常が無かったのに、測ったら絶縁不良だった、という事例が載っています。
前回のブレーカーが落ちたときの初動(記事105)で「絶縁抵抗を測ってもらってください」と書きました。今回は、その測定で何が分かるのか、基準値をどう読むのか、報告書のどこを見るのか、を1本にまとめます。
点検の時期は「1年目・5年目・9年目以降は4年ごと」
まず時期です。JEMA・JPEA「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(JM19Z001)の附属書Bに、住宅用(一般用電気工作物)の点検の時期と目的が表になっています。
| 点検 | 実施者 | 目的(ガイドラインの記載) |
|---|---|---|
| 設置1年目点検 | 専門技術者 | 機器・部材・システムの初期的な不具合を見つけ、補修する。施工上の不具合やシステムの初期不良を発見することが、長期間の運転を維持するうえで重要 |
| 設置5年目点検 | 専門技術者 | 機器・部材の劣化、破損の状況を確認。メーカーの精密点検が設定されていれば別途実施 |
| 設置9年目以降(4年ごと) | 専門技術者 | 劣化・破損の確認に加え、保証期間の確認、消耗部品の交換、設備更新時期の検討 |
| 設置20年目以降(4年ごと) | 専門技術者 | 同上。点検内容を確認し、設備更新時期を検討 |
| 日常点検 | システム所有者 | 毎月1回程度と、地震・台風・洪水・悪天候(大雨・強風・大雪・雹)・火災・落雷などの後。工具や計測器を使わない目視 |
ガイドラインは「点検の頻度を規定しない」と断ったうえで、この表を参考の例として示しています。つまり4年ごとは目安で、環境に応じて増減するものです。東北の家なら「大雪の後」の日常点検が、この表の「悪天候の後」に当たります。

▲ 当社施工事例:金属屋根に太陽光パネルを設置中
「10年目」と見出しに書いたのは、この表の「9年目以降」と、機器の保証(パワーコンディショナは10年前後の機種が多い)が重なる時期だからです。ここで測っておくと、保証が切れる前に不具合を見つけられます。
目で見て「異常なし」だったのに、測ったら絶縁不良だった事例
消費者庁の消費者安全調査委員会が2019年にまとめた住宅用太陽光の火災の調査報告書には、点検と測定の関係が読み取れる事例が2つあります。
- 事例4(新潟県・2013年):事故の3日前に「太陽光のブレーカーが落ちる」と連絡があり、施工業者が絶縁測定をして2系統目の絶縁不良を見つけた。屋根の上の目視では異常が見つからず、接続を切ったが、3日後に出火した
- 事例6(神奈川県・2014年):「ブレーカーが落ちる」の連絡を受けて前月・同月に3回点検し、7系統のうち2系統で絶縁不良を確認、断路器を切ったままにしたが出火した
2つの事例に共通しているのは、不具合を見つけたのは目視ではなく絶縁測定だったことです。もう1つ共通しているのは、見つけたあと「回路を切っただけ」では止まらなかったことで、これは記事105に書いた2点地絡の話(日射がある限り発電が止まらないので遮光が要る)です。
ここで言いたいのは、施工業者の落ち度ではありません。屋根の上のケーブルの被覆の傷は、上から見ても分からない、ということです。だから測ります。
測定1:絶縁抵抗——「基準値以上」で安心してはいけない理由
絶縁抵抗の測定は、電気を通してはいけないところ(ケーブルの被覆、モジュールの枠、接地)に電気が漏れていないかを、抵抗の大きさで確かめる測定です。数字が大きいほど漏れていません。単位はMΩ(メガオーム)です。
基準値は法令にあります
電気設備に関する技術基準を定める省令の第58条に、低圧の電路の絶縁抵抗の最低値が決められています。
| 電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 |
|---|---|
| 300V以下で、対地電圧が150V以下 | 0.1MΩ以上 |
| 300V以下で、その他 | 0.2MΩ以上 |
| 300Vを超えるもの | 0.4MΩ以上 |
住宅用の太陽光の直流側は、ストリング(モジュールを直列につないだ1回路)の電圧が300Vを超える構成が多く、その場合の法定の最低値は0.4MΩです。ガイドラインは、IEC規格にもとづく別の基準(10kW以下で最低1MΩ、試験電圧500Vなど)も載せたうえで、電技解釈で施設している場合は省令58条に従う、と書いています。
ガイドラインのルール:基準値以上でも「前回より大幅に低ければ調べる」
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。ガイドラインの解説5.5.1「絶縁抵抗の測定」には、こう書かれています。
判定基準は、竣工時のストリング、太陽電池サブアレイ及び太陽電池アレイの実測値に基づく実用的な値を設定することが、維持管理上有効である。また、測定値が判定基準値以上であっても、次の場合には原因の調査を行う。(JM19Z001 解説5.5.1 f)
「次の場合」として挙げられているのが、①経年変化=前回の測定時と比較して大幅に低い絶縁抵抗値になった場合、②相対変化=ほかのストリングに比べて異常に低い値がある場合(例:数100MΩや数10MΩに対して数MΩや1MΩ以下)の2つです。
つまり、法定の0.4MΩを上回っていても、1年目に200MΩだった回路が今年は3MΩなら、調べる対象です。法定値は「これを下回ったら違反」の線であって、「これ以上なら健全」の線ではありません。
だから1年目の数字が要ります
前回の値が無ければ、「大幅に低い」かどうかを判断できません。
ガイドラインも、判定基準は竣工時の実測値にもとづいて設定するのが有効、と書いています。
点検報告書に「異常なし」の3文字しか無いなら、次回と比べる材料がありません。回路ごとのMΩの数字を残してもらってください。
東北では「測る日の天気」まで記録します
ガイドラインは、絶縁抵抗の変化について「前回との測定条件の違いを明確にして判断する必要がある」と書き、測定時に天候・気温・湿度を記録するために温度計と湿度計を準備するよう求めています。太陽電池は面積が大きく、部材の温度特性で絶縁抵抗が比較的大きく変わるものがあるためです。
さらに、地絡試験の項(13.4.1)にはこうあります。
地絡条件は、断続的なもの、雨天時だけ発生するものもあり、その発生状況から測定のタイミングを見極める必要がある。(JM19Z001 13.4.1)
東北でこれが効くのは、秋の長雨(10〜11月)と雪解け(3〜4月)です。被覆に小さな傷があるケーブルは、乾いているときは絶縁が保たれ、濡れると漏れます。晴れた日に測って「異常なし」でも、雨の日だけブレーカーが落ちる家は、雨のあとにもう一度測る必要があります。「雨の日だけ落ちる」という症状は、点検を頼むときに必ず伝えてください。測る日を決める情報になります。
測定2:開放電圧——「配線どおりに発電しているか」を短時間で確かめる
開放電圧(Voc)は、回路に負荷をつながない状態でストリングが出している電圧です。ガイドライン附属書D.2.4によると、この測定の目的は「ストリングが設計図どおりに正しく配線されているか、想定されている数のモジュールが直列に接続されているか」を確認することです。
評価は、期待値と合っているか(5%以内が一般的)で行います。期待値の出し方は、モジュールのデータシートと枚数から計算する、1枚のモジュールで測って枚数分に掛ける、同じ構成のストリング同士を比べる、の3通りが挙げられています。
読み方も、ガイドラインの注記にそのまま書かれています。
- 期待値より非常に低い:モジュールが間違った極性で接続されている、絶縁不良でバイパスダイオードがショート故障している、損傷、電線管や端子ボックス内に水が溜まっている、などの可能性
- 期待値より高い:通常は配線の誤り
住宅用で10年目に効くのは「低い」側です。ストリングのうち1枚のバイパスダイオードが壊れると、そのぶん電圧が下がります。屋根の上からは見えませんが、電圧を測ると枚数のズレとして現れます。ストリングごとに測って、ストリング間で比べる——これが開放電圧の使い方です。

▲ 当社施工事例:壁掛けのパワーコンディショナ
測定3:地絡と接地——「切ったか」ではなく「遮光したか」
3つ目は地絡の確認と、接地抵抗の測定です。
接地抵抗は、落雷や漏電のときに電気を大地へ逃がす経路が生きているかを確かめる測定で、ガイドラインの定期点検表では「規定の接地抵抗値以下であること(電気設備の技術基準の解釈第17条参照)」を4年に1回の項目にしています。接地線は目視でも「外れ・腐食・断線がないか」を見ますが、抵抗値は測らないと分かりません。
地絡は、電気が本来の回路の外(大地・金属枠)へ流れている状態です。ガイドライン13.4.1は、一般的な原因として「電線・ケーブルの傷つき(電線入線口のエッジや加工時の傷)、電線管内の水没、端子部の金属屑などの施工不良、太陽電池モジュールの不具合」を挙げています。パワーコンディショナには地絡検知機能と地絡時の運転履歴を保存するものがある、とも書かれているので、点検ではまずパワコンの履歴を読みます。
地絡が見つかったときの対処は、記事105で書いたとおりです。
多点地絡のような場合には、日射がある限り地絡電流を止めることができず…地絡が起きている直列ストリング上のすべての太陽電池モジュールを遮光し発電を止め…修復作業が完了するまでは遮光しておくことが望ましい。(JM19Z001 13.4.1.3)
点検で地絡が出たら、聞くのは「切りましたか」ではなく「遮光しましたか」です。
点検報告書で見る4つと、施工店への頼み方
測定が入っている点検かどうかは、報告書で分かります。見るのは次の4つです。
- 回路(ストリング)ごとの絶縁抵抗の数字(MΩ)と、測定した日の天候・気温
- ストリングごとの開放電圧(V)と、期待値との差
- 接地抵抗(Ω)
- 前回の値との比較——1年目・5年目の数字が並んでいるか
当社は、当社からご購入いただいた太陽光発電システムについて、設置後1・5・9・13・17年目に無償で定期点検に伺っています。点検項目はこのガイドラインを参考に23項目で組んでいて、電気測定の項目には「絶縁抵抗(試験電圧・天候・温度を記録)」「直流動作電圧・電流(ストリングごとに測定し、ばらつきを確認)」「接地連続性・接地抵抗」が入っています。項目の一覧は太陽光発電システムのページに載せています。他社で設置されたシステムの点検もご相談ください。
施工店に頼むときの言い方は、この4つをそのまま口にすればよいです。
点検を頼むときの言い方
「絶縁抵抗を回路ごとに測って、天候と気温を付けて数字で出してください」
「開放電圧をストリングごとに測って、期待値との差を書いてください」
「前回(1年目・5年目)の値と並べてください」
「雨の日だけブレーカーが落ちます。測る日を相談させてください」
「地絡が出たら、遮光までお願いします」
「点検一式」の見積りに、この4つが書かれていなければ、維持費と点検の義務の正体(記事38)に書いたとおり、何をしてくれるのか分かりません。測定項目を書いてもらってから比べてください。
当社が運営するサイト「ソラカルテ」では、点検や修理の見積書もAI診断できます。「絶縁抵抗測定」「開放電圧測定」の項目が入っているかを確かめる材料として使ってください。
よくある質問
Q1. 絶縁抵抗が法定の0.4MΩを上回っていれば、問題ないと考えてよいですか。
A. 法令上の最低値は満たしています。ただしガイドラインは、基準値以上でも「前回の測定時と比較して大幅に低い」「ほかのストリングに比べて異常に低い」場合は原因を調査する、と書いています。健全なストリングは数10〜数100MΩの値が出ることが多く、数MΩまで下がっていれば、法定値の上でも調べる対象です。前回の数字と並べて判断してください。
Q2. 晴れた日に測って異常なしでした。でも雨の日にブレーカーが落ちます。
A. 地絡には「断続的なもの、雨天時だけ発生するもの」があると、ガイドラインに明記されています。被覆の小さな傷は、濡れたときだけ漏れます。雨のあとに測り直すか、パワーコンディショナの地絡検知の履歴を読んでもらってください。記事105に書いたとおり、落ちるたびに入れ直して様子を見る状態は続けないでください。
Q3. 1年目の点検を受けていません。比較する数字がありません。
A. 今回の測定値を「基準」として記録してもらってください。ガイドラインが「竣工時の実測値にもとづく判定基準」を勧めているのは、比較できる数字を持つためです。今回が最初の数字になれば、次回(4年後)から比較ができます。あわせて、パワーコンディショナのエラー履歴と、年間の発電量の推移を報告書に添えてもらうと、過去の分もある程度は補えます。
まとめ
- 定期点検の時期は1年目・5年目・9年目以降4年ごと(JPEAガイドライン附属書B)。日常点検は毎月と大雪・台風・地震の後に所有者が目視
- 国の事故調査には、目視では異常なし、絶縁測定で絶縁不良が分かった事例が2件ある。屋根の上の被覆の傷は見えない
- 絶縁抵抗は法定の最低値(300V超で0.4MΩ)を満たしていても、前回より大幅に低い/ほかの回路より異常に低いなら調べる。だから1年目の数字が要る
- 東北では地絡が雨の日だけ・雪解けの時期だけ出ることがある。測る日の天候・気温を記録し、「雨の日だけ落ちる」は必ず伝える
- 開放電圧はストリングごとに測り、期待値の5%以内か、ストリング間で比べる。低ければバイパスダイオードの故障・水・極性、高ければ配線の誤り
- 地絡が出たら「切ったか」ではなく「遮光したか」。接地抵抗も測る
- 報告書で見るのは回路ごとの数字・天候・前回比の3点。「異常なし」だけの報告書は次回と比べられない
見て終わる点検と、測って記録する点検は、値段が違うことがあります。違う理由は、次回の点検で比べられる数字が残るかどうかです。10年目に測っておいてください。
※本記事は2026年9月16日時点の公開資料にもとづいています。点検の時期・項目はJEMA・JPEA「太陽光発電システム保守点検ガイドライン(JM19Z001・2019年12月)」の附属書B(一般用電気工作物の定期点検要領例)を引用したもので、ガイドライン自体は「点検の頻度を規定しない」としています。絶縁抵抗の法定値は電気設備に関する技術基準を定める省令第58条によります。事例は消費者庁 消費者安全調査委員会の報告書(2019年1月)から要約しました。個別の判定はお手元の点検記録と施工店の説明を優先してください。
出典
- JEMA・JPEA「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」JM19Z001(2019年12月)附属書B 定期点検要領例・附属書D 点検要件と方法・13.4 電気試験の手順・解説5.5 測定方法の補足 https://www.jema-net.or.jp/engineering/solar/evefa20000002bnl-att/191227_pv_maintenance.pdf
- 消費者庁 消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等」(2019年1月28日)本文 https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_012/pdf/report_012_190128_0002.pdf
- e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条(低圧の電路の絶縁性能) https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052
- 株式会社ファナス「太陽光発電システム|設置後1・5・9・13・17年目の無償定期点検」(点検23項目) https://funas.co.jp/工事内容-4#inspection
当社が運営する「ソラカルテ」では、太陽光・蓄電池の見積書をその場で無料AI診断できます。電話番号の登録は不要です。
監修・執筆:株式会社ファナス 代表取締役 不藤政次|宮城県・福島県・山形県・岩手県・秋田県・青森県・新潟県の各市町村で太陽光発電・蓄電池・V2H・エコキュートを施工販売。無料相談はこちら
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